高校生が予土線の魅力を伝える|地域交通と学びの多様化を考えてみました
主な参考文献:文部科学省.(2019)「2019年度『地域との協働による高等学校教育改革推進事業』指定校について」.
今朝の愛媛新聞で、宇和島東高校の生徒さんが文化祭でJR予土線沿線の特産品を販売し、予土線の魅力発信や利用促進につなげようとしている記事を読みました¹。
最初は「高校生が地域の特産品を販売している」という明るい話題として受け止めました。しかし、少し調べてみると、このような取り組みは単なるイベントではなく、高校生の学び方が変わってきていること、そして地域交通をどう守っていくかという課題ともつながっているように感じました。
特に、文部科学省が2019年度から「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」を始めていたことは、私自身も今回調べるまで詳しく知りませんでした²。高校生が教室の中だけで学ぶのではなく、地域の人、地域の産業、地域交通と関わりながら学ぶ時代になってきているのかもしれません。
1. はじめに
今回の新聞記事を読んで印象に残ったのは、高校生が「地域の魅力を発信する側」として関わっていたことです¹。
予土線は、宇和島市から鬼北町、松野町、高知県四万十町方面へとつながる路線です。地域で暮らす人にとっては、通学や通院、買い物、観光などを支える大切な交通手段の一つです。
一方で、地方の鉄道やバスは、人口減少や利用者の減少、担い手不足などの影響を受けています。国土交通省は、全国で地域交通の維持が大きな課題になっていることを示しています⁵。
そのような中で、高校生が予土線沿線の特産品を販売し、沿線の魅力を伝える取り組みは、地域交通を考えるきっかけにもなると感じました。
なお、宇和島東高校が文部科学省の「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」の指定校であることは、確認した範囲では確認できませんでした。
ただし、同校は愛媛県教育委員会から、アクティブ・ラーニング推進事業、高等学校授業改善推進事業、ICT活用授業改善推進校、令和6年度の先導的授業実践型モデル校などの指定を受け、教科等横断型授業やSTEAM教育に取り組んでいる学校です。
2. 高校生が地域と関わる学びとは?
文部科学省は2019年度、「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」として、全国51校を指定しました²。
この事業では、高校が市町村、高等教育機関、産業界などと連携し、地域課題の解決を通じた探究的な学びを進めることが目指されています²。
高校では「総合的な探究の時間」も重視されています。これは、生徒が自分で問いを立て、情報を集め、考え、まとめ、表現していく学びです³。
今回の宇和島東高校の取り組みも、予土線沿線の特産品を調べ、販売し、地域の人に伝えるという意味では、地域を題材にした探究的な学びの一つとして見ることができるのではないでしょうか。
3. 全国ではどのぐらい広がっているのか
高校生が地域の魅力発信や地域課題に関わる取り組みを、全国で一括して数えた公的統計は、確認した範囲では見つかりませんでした。
ただし、関連する資料を見ると、地域と高校がつながる取り組みは全国で広がっていると考えられます。
次の表にまとめてみました。
| 取り組み | 確認できた規模 | 内容 |
|---|---|---|
| 文科省の地域協働事業 | 2019年度51校² | 地域課題を学ぶ |
| 地域みらい留学 | 約190校⁶ | 地域で学ぶ選択肢 |
| 高校魅力化評価システム | 367校・約12万人⁷ | 学びを可視化 |
| 山形県の鉄道ポスター | 県内5高校⁸ | 鉄道利用啓発 |
文部科学省の「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」では、2019年度に全国51校が指定されています²。
また、地域みらい留学では、全国各地の高校が地域で学ぶ選択肢として紹介されており、地域と高校をつなぐ取り組みが広がっています⁶。
さらに、高校魅力化評価システムでは、2024年度に全国47都道府県367校、約12万人の高校生が回答しており、地域と学校の学習環境を可視化する動きもあります⁷。
公共交通に関する事例としては、山形県で県内5つの高校がローカル鉄道利用啓発ポスターを制作しています⁸。高校生自身に鉄道への関心を持ってもらい、地域の人にも利用を促す取り組みです⁸。
つまり、今回の宇和島東高校の取り組みは、全国的に見ても、地域交通・地域産品・高校生の探究学習が重なった、時代の流れに沿った取り組みといえそうです。
4. 背景にある地域交通の課題
このような取り組みが広がっている背景には、地域公共交通の厳しい状況があります。
国土交通省は、人口減少、少子高齢化、運転者などの担い手不足により、地域交通の維持が難しくなっていることを説明しています⁵。
また、学校基本調査は、学校数や在学者数などを毎年調査し、教育行政の基礎資料として活用されています⁴。子どもの数が減る地域では、高校のあり方、通学手段、地域交通の維持が別々の問題ではなく、つながった課題になっていくと考えられます。
宇和島でも、鉄道やバスは「誰かが使うもの」ではなく、通学、通院、買い物、観光、地域のつながりを支える大切な基盤です。
特に予土線のような路線は、単なる移動手段だけでなく、沿線の町や人をつなぐ存在でもあります。
5. メリットとデメリット
高校生が地域の魅力発信や交通利用促進に関わることには、多くのメリットがあります。一方で、注意しておきたい点もあります。
次の表にまとめてみました。
| 視点 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 高校生 | 実社会で学べる | 負担が増える |
| 学校 | 探究学習になる | 教員負担がある |
| 地域 | 若い視点が入る | 単発で終わる |
| 交通 | 利用のきっかけ | 効果測定が難しい |
高校生にとっては、地域を「自分とは関係のないもの」ではなく、「自分たちも関われるもの」として考える機会になります。商品を調べる、説明する、販売する、地域の人と話すという経験は、教科書だけでは得にくい学びにつながるかもしれません。
学校にとっても、地域と連携した探究学習の実践になります。知識を覚えるだけでなく、地域の課題を自分ごととして考える力を育てる機会になると考えられます。
地域にとっては、高校生ならではの視点が入ることが大きなメリットです。大人が作る観光パンフレットとは違い、高校生の素直な言葉や感性によって、地域の魅力が新しく見えてくることもあります。
一方で、注意点もあります。
まず、学校や先生の負担が増える可能性があります。地域連携や探究学習は、準備、調整、評価に時間がかかるため、学校現場を支える仕組みが必要です。
また、高校生に地域PRを任せすぎることにも注意が必要です。生徒の学びが中心であり、地域課題の解決そのものを高校生だけに背負わせてはいけないと思います。
さらに、文化祭やイベントで一度盛り上がっても、それが継続的な利用促進につながるかどうかは、別に検証が必要です。
6. ここから考えたこと
今回の記事を読んで、私は「高校生の学びの多様化」が、宇和島の身近なところにも表れているのだと感じました。
昔の高校教育は、進学や就職に向けた知識・技能の習得が中心だったかもしれません。もちろん、それも大切です。
しかし今は、地域の課題を知り、地域の人と関わり、自分の言葉で発信することも、高校生にとって大切な学びになっているように思います。
予土線の魅力を伝えることは、鉄道を守るためだけではありません。宇和島、鬼北、松野、四万十といった地域のつながりを知ることでもあります。
そして、高校生がそのつながりを学び、伝えることは、地域の未来を考える小さな入口になるのではないでしょうか。
私自身も、地域のことを考えるとき、行政や大人の議論だけでなく、若い世代がどのように地域を見ているのかを大切にしたいと感じました。
7. まとめ
今回の内容をまとめると、次のようになります。
・高校生が地域の魅力発信に関わる取り組みは、全国で広がっている
・文部科学省は2019年度から、地域と高校が協働する教育改革事業を進めている
・地域公共交通は、人口減少や担い手不足の中で厳しい状況にある
・高校生の取り組みは、地域PRだけでなく、探究的な学びとしても意味がある
・一方で、高校生に負担をかけすぎず、大人が継続して支えることが大切
宇和島東高校の生徒さんたちの取り組みは、予土線の利用促進という目的だけでなく、地域を知り、地域の人とつながり、自分たちの言葉で発信する学びでもあると感じました。
こうした小さな取り組みが、地域交通や地域の魅力を見直すきっかけになっていくとよいなと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献・参考資料
- 愛媛新聞.(2026)「予土線 食の魅力もPR」2026年6月14日 朝刊.
- 文部科学省.(2019)2019年度「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」指定校について.
- 文部科学省.(2019)高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編.
- 政府統計の総合窓口 e-Stat.(2025)学校基本調査.
- 国土交通省.(2026)「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定.
- 一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム.(2026)地域みらい留学事業.
- 一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム.(2025)高校魅力化評価システム 概要版.
- やまがた鉄道沿線活性化プロジェクト.(2025)沿線高校生による「ローカル鉄道利用啓発ポスター」.

