宇和島市6月補正予算案で見えた「移動の足」の課題

谷本一真
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ライドシェア実証運行から考える、これからの地域交通

主な参考文献
宇和島市.(2026)「令和8年度6月補正予算説明資料」.

はじめに

今朝の愛媛新聞で、宇和島市が6月定例会に提出する補正予算案に関する記事が掲載されていました。中心となっていたのは、宇和島市内での「ライドシェア実証運行」です¹。

この記事は、単に新しい交通サービスが始まるという話ではなく、免許返納後の移動手段、タクシー不足、地域公共交通の再構築、そして高齢化が進む宇和島市でどう暮らしを支えていくのかという、かなり大きなテーマにつながる内容だと感じました。

宇和島市は令和8年度6月補正予算について関係資料を公開しており、その中で「地域公共交通の再構築に向けた取組」として1,683万円が計上されています²。公式資料では、令和7年度に実施した公共交通実態調査の結果を踏まえ、自家用車を運転できない人などの移動手段を確保するため、運行ルート等の調査分析とライドシェアの実証運行を行うものとされています²。

まず、今回の補正予算案で示された主な内容

宇和島市の6月補正予算説明資料では、一般会計補正予算額は7,720万円とされています。その中で、主な事業として、新伊達博物館の指定管理料、観光振興計画の策定、地域公共交通の再構築、介護保険施設等の調査分析などが示されています²。

主な項目金額・内容意味
新伊達博物館の管理運営債務負担行為 2億9,600万円令和10年春の開館予定に向けた指定管理の準備
観光振興計画の策定債務負担行為 1,100万円宇和島市の観光戦略を整理する取組
地域公共交通の再構築1,683万円ライドシェア実証運行、ルート調査分析など
介護保険施設等の調査分析600万円市立介護老人保健施設などの今後のあり方を検討

この中で、新聞記事が大きく取り上げていたのが「地域公共交通の再構築」、つまりライドシェアの実証運行です。

ライドシェア実証運行では何が行われるのか

公式資料によると、実証運行の予定期間は令和8年11月から令和9年1月までとされています²。運行内容は、大きく2つに分かれています。

1つ目は「公共ライドシェア」、つまり乗合型の仕組みです。運行主体は宇和島市で、運行地域は吉田地区が予定されています²。

2つ目は「日本版ライドシェア」、つまりタクシー型の仕組みです。こちらはタクシー事業者が運行主体となり、宇和島、吉田、三間地区で、タクシーが不足する時間帯に運行する予定とされています²。

つまり、今回の実証運行は「タクシーをなくしてライドシェアに置き換える」という話ではなく、既存のタクシーやコミュニティバスだけでは支えきれない部分を、地域の実情に合わせて補う試みと見るのが自然だと思います。

「公共ライドシェア」と「日本版ライドシェア」は違う

ここは少し分かりにくいところです。

国土交通省によると、日本版ライドシェアは、地域交通の担い手不足や移動の足不足を補うため、タクシー事業者の管理のもとで、自家用車や一般ドライバーを活用する仕組みとして創設されたものとされています⁴。タクシーが不足する地域、時期、時間帯を特定し、不足分を補う制度とされています⁴。

引用
引用

公共ライドシェアは、自家用有償旅客運送とも呼ばれ、バスやタクシー事業者による輸送サービスが困難な場合に、地域の関係者による協議を経て、市町村やNPO法人などが自家用車を用いて移動手段を確保する制度とされています⁵。

引用
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国土交通省の資料では、地域の実情に応じて関係者が十分に協議し、適切な役割分担のもとで持続可能な移動手段を確保することが重要とされています⁵。

宇和島市の今回の計画では、吉田地区で公共ライドシェア、宇和島・吉田・三間地区で日本版ライドシェアを実証する形になっています。これは、地区ごとの交通事情に合わせて、複数の仕組みを試そうとしているものと考えられます。

なぜ今、宇和島市でライドシェアなのか

宇和島市のプロポーザル資料では、令和7年度に実施した公共交通実態調査の結果から、免許返納後など、近い将来自家用車を運転できなくなる人の移動手段の確保が、優先的に取り組むべき課題であることが明らかになったとされています³。

また、自宅から目的地まで「ドア・ツー・ドア」に近い形で移動できる交通サービスへのニーズが高いことも示されています³。

宇和島市のように、中心市街地、旧町地域、山間部、海沿いの集落がある地域では、同じ市内でも移動の困りごとは一律ではありません。病院、買い物、通院、公共施設への移動など、生活に必要な移動手段をどう守るかは、今後ますます大きな課題になると考えられます。

タクシーがつかまりにくいかどうかは、私自身は実感がないですが。

市民目線で見たいポイント

今回のライドシェア実証運行で大切なのは、単に「新しい仕組みを導入すること」ではなく、実際に市民の生活がどれだけ便利になるかだと思います。

特に確認したいのは、次のような点です。

見るべき点なぜ大事か
予約方法スマホが苦手な高齢者も使えるか
運行時間病院・買い物・帰宅時間に合うか
料金継続して使える負担感か
安全管理運転者の登録、研修、事故時対応が十分か
既存タクシーとの関係地元交通事業者の経営を壊さず補完できるか
実証後の検証利用者数だけでなく、困りごとが減ったかを見られるか

ライドシェアは便利な言葉ですが、安全性、責任の所在、予約のしやすさ、採算性、既存事業者との役割分担を丁寧に設計しなければ、長続きしない可能性もあります。

国土交通省も、地域公共交通について、地域の関係者が連携・協働し、利便性・持続可能性・生産性の高い公共交通ネットワークへ「リ・デザイン」することを進めるとしています⁶。

実際、大阪に行かれた方から聞くと、「大阪はタクシーなどはアプリで予約する」との事です。

時代に適した過ごし方、公共サービスの利用方法を検証を繰り返していく事が重要だと思います。

ライドシェア以外にも見えてくる市政の論点

今回の補正予算案では、ライドシェアだけでなく、
新伊達博物館の指定管理
観光振興計画
介護保険施設等の調査分析
水田農業の生産体制強化
学校防災教育
なども示されています²。

つまり、今回の新聞記事から見えるのは、宇和島市が「観光」「交通」「介護」「農業」「防災」といった複数の課題に同時に対応しようとしている姿です。

ただし、それぞれの事業が本当に市民生活の改善につながるかどうかは、予算をつけるだけでは判断できません。議会では、事業の必要性、費用対効果、実施後の検証方法、住民への説明のあり方などが丁寧に確認される必要があると思います。

結語

今回の記事で最も重要なのは、宇和島市が「移動の足」の問題を本格的に政策課題として扱い始めている点だと感じます。

高齢化が進む地域では、車を運転できるかどうかが、生活の自由度に直結します。病院に行けるか、買い物に行けるか、人と会えるか。これは単なる交通政策ではなく、健康、福祉、地域コミュニティにも関わる問題です。

今回のライドシェア実証運行が、単なる一時的な実験で終わるのではなく、宇和島市民の暮らしを支える仕組みづくりにつながるかどうか。そこを市民として見ていく必要がありそうです。

また、議会での議論では、「便利になるか」だけでなく、「安全か」「公平か」「続けられるか」「交通弱者に本当に届くか」という視点が大切になると考えられます。

参考文献・参考資料

  1. 愛媛新聞.「宇和島市 ライドシェア実証運行 旧市内と吉田・三間地域で」2026年6月4日 朝刊.
  2. 宇和島市.(2026)令和8年度6月補正予算説明資料.
  3. 宇和島市.(2026)官民地域共創によるドア・ツー・ドアの輸送推進事業業務に係る公募型プロポーザルの実施について.
  4. 国土交通省.(2024)日本版ライドシェア(自家用車活用事業)関係情報.
  5. 国土交通省.(2025)自家用有償旅客運送(公共ライドシェア)ハンドブック.
  6. 国土交通省.(2026)地域公共交通「リ・デザイン」関係予算.
ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan、JFA-B級
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。
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