宇和島市のふるさと納税は何に使われているのか|「集める」だけでなく、まちの未来につなげる仕組みとして考える
はじめに
2026年5月2日の愛媛新聞では、愛媛県と県内20市町の2025年度ふるさと納税額が過去最高を更新したことが報じられていました。
紙面上では、宇和島市についても57,780件、91,232万円、つまり約9億1,232万円の寄附があったとされています。なお、この2025年度分については、現時点で宇和島市公式ホームページ上の詳細な実績ページまでは確認できなかったため、この記事では市公式資料で確認できる令和6年度の実績と、令和7年度の実施予定を中心に整理します。
ふるさと納税を見るとき、どうしても「いくら集まったのか」や「どんな返礼品が人気なのか」に目が向きやすいと思います。
しかし、自治体の姿勢を見るうえで大切なのは、集まった寄附金をどのように位置づけ、どのような事業に使っているのかという点ではないでしょうか。
今回は、宇和島市の公式資料をもとに、宇和島市がふるさと納税をどのように活用しているのかを整理してみたいと思います。
宇和島市のふるさと納税は「ふるさとうわじま応援基金」に積み立てられる
宇和島市の公式ホームページでは、ふるさと納税による寄附金は「ふるさとうわじま応援基金」に積み立てられるとされています。¹
その目的は、宇和島市の豊かな自然環境、歴史、文化などを後世に継承し、将来に向けてさらに発展していくこととされています。¹
つまり、宇和島市のふるさと納税は、単なる一時的な収入ではなく、将来のまちづくりに活用するための財源として位置づけられているようです。
宇和島市では、寄附者が指定できる使い道として、主に次の6つの分野が示されています。¹
| 使い道 | 内容のイメージ |
|---|---|
| 海、山と共生するための環境保全 | 自然環境、生活環境、環境保全に関わる事業 |
| 安心、思いやりのあるまちづくり | 福祉、防災、安心して暮らせる地域づくり |
| 未来を担う子どもたちの育成 | 子育て、教育、学習支援、遊び場の整備 |
| 歴史、文化の保存及び継承 | 宇和島城、文化財、伝統行事、歴史資源の保存 |
| 地域の特性を活かした産業の振興 | 農業、水産業、商業、販路開拓、創業支援 |
| その他市長が適当と認めた事業 | 市が重点的に必要と考える事業 |
この分類を見ると、宇和島市はふるさと納税を、環境、防災、福祉、教育、文化、産業振興など、幅広い分野に活用していることがわかります。
令和6年度は約9億5,667万円の寄附が集まっている
宇和島市が公表している令和6年度の寄附状況では、寄附件数は56,443件、寄附金額は956,671,036円とされています。²
使い道別に見ると、寄附金額は次のように公表されています。²
| 使い道 | 寄附金額 | おおまかな見方 |
|---|---|---|
| 環境 | 226,851,500円 | 生活環境や自然環境を守る分野 |
| やさしさ | 68,400,000円 | 福祉や安心に関わる分野 |
| 教育 | 276,920,700円 | 子どもや学校、学習支援に関わる分野 |
| 歴史文化 | 45,391,000円 | 宇和島の歴史や文化を守る分野 |
| 産業振興 | 111,298,621円 | 地域産業や事業者を支える分野 |
| その他 | 227,809,215円 | 市が必要と判断する幅広い事業 |
| 合計 | 956,671,036円 | 令和6年度の寄附総額 |
この表を見ると、特に金額が大きいのは「教育」「その他」「環境」の3分野であることがわかります。
教育には約2億7,692万円、環境には約2億2,685万円、その他には約2億2,780万円が寄附されており、宇和島市が子どもたちの育成や生活環境の整備、幅広い市政課題への対応にふるさと納税を活用していることがうかがえます。²
一方で、「その他」にも大きな金額が集まっています。この分野は、市長が適当と認めた事業に活用される枠であるため、今後も市民に対して、どの事業にどれだけ使われたのかをわかりやすく示していくことが大切ではないかと思います。
では、具体的に何に使われているのか
「教育に使われています」「環境に使われています」と言われても、少しイメージしにくいかもしれません。
そこで、宇和島市が公表している令和6年度の実施事業を、分野ごとに整理すると次のようになります。³
| 分野 | 主な使い道の例 | 市民生活との関係 |
|---|---|---|
| 環境 | 犬・猫不妊去勢手術費補助、スズメバチ等駆除費補助、島しょ部生ごみ処理機整備 | 生活環境や衛生面の改善につながる |
| やさしさ・安心 | 地域課題に即した体験型防災プログラムなど | 防災意識や地域の安心につながる |
| 教育・子育て | 公園遊具整備、補充学習支援、学校自主企画学習、うわじま土曜塾、保育所等遊具整備 | 子どもの学びや遊びの環境づくりにつながる |
| 産業振興 | 販路開拓支援、催事開催、海外販路商談会、中小企業応援、創業支援、アコヤガイ研究 | 地域経済や地元産業の支援につながる |
| 歴史文化 | 宇和島城天守ライトアップ設備改修 | 宇和島らしい歴史・文化の保存と発信につながる |
このように整理すると、ふるさと納税は単なる「市の収入」ではなく、
・子どもたちの学びや遊びを支える
・暮らしの安全や衛生を守る
・災害に備える
・地域産業を応援する
・歴史や文化を次の世代に残す
といった形で使われていることが分かります。
令和6年度の具体例を見ると、使い道がさらに見えやすい
宇和島市の公式ページでは、令和6年度に実施された「ふるさとうわじま応援事業」も公表されています。³
その中から、分かりやすい具体例を整理すると、次のようになります。
| 事業の例 | 内容 | 読み取れる意味 |
|---|---|---|
| スズメバチ等駆除費補助金事業 | 令和6年度は106件に対して補助を実施 | 住民の安全や生活環境を守るための支援 |
| 保育所等遊具整備事業 | 市内9つの保育園にある15基の遊具を更新 | 子どもたちが安心して遊べる環境づくり |
| うわじま土曜塾 | 子どもたちの学習機会を支援 | 学力向上や学びの場づくり |
| 産業振興関係事業 | 販路開拓支援、海外販路商談会、中小企業応援、創業支援など | 事業者支援や地域経済の活性化 |
| アコヤガイ研究 | 真珠産業に関わる研究支援 | 宇和島らしい水産業を守る取り組み |
| 宇和島城天守ライトアップ設備改修 | 水銀灯照明設備を多色LED照明に改修 | 歴史資源の活用、節電、にぎわい創出 |
この表を見ると、ふるさと納税は、ただ大きな公共事業に使われているだけではなく、市民の身近な困りごとや、子どもたちの環境、地域産業、観光や文化にも使われていることが分かります。
たとえば、スズメバチ駆除や犬・猫の不妊去勢手術費補助は、金額の大きさだけでは見えにくいかもしれませんが、地域で暮らす人にとっては生活の安全や衛生に関わる大切な支援だと思います。
また、保育所の遊具整備やうわじま土曜塾は、子どもたちの成長環境に関わる使い道です。ふるさと納税が「未来を担う子どもたちの育成」に使われていることが、比較的分かりやすい例だと感じます。
個別の事業ごとの金額はどこまで分かるのか
ここで気になるのは、「具体的に、どの事業にいくら使われたのか」という点です。
この点については、現時点で宇和島市の公式ページから分かることと、まだ分かりにくいことがあります。
| 項目 | 公開状況 |
|---|---|
| 令和6年度の寄附総額 | 分かる |
| 分野ごとの寄附金額 | 分かる |
| 実施された事業名 | 分かる |
| 事業の内容 | 分かる |
| それぞれの事業にいくら充当したか | 公開ページでは確認しにくい |
つまり、たとえば「教育に合計いくら寄附が集まったか」は分かりますが、「保育所の遊具整備にいくら」「宇和島城ライトアップにいくら」といった個別事業ごとの充当額までは、令和6年度の公開ページからは確認しにくいようです。²³
そのため、現時点で確実に言えるのは、「教育」「環境」「産業振興」などの大きな使い道ごとの金額までは分かるものの、令和6年度の個別事業ごとの充当額までは、公開ページだけでは分かりにくいということです。
市民としては、今後、各事業について「事業費」と「ふるさと納税からの充当額」が分かる形で公表されると、寄附金がどのようにまちづくりへ使われているのか、さらに理解しやすくなるのではないでしょうか。
令和7年度は「選ばれるまち」を意識した事業にも使われる予定
令和7年度の実施予定を見ると、備蓄物資整備、学校教育活動支援員の配置、うわじま土曜塾、伊達なうわじまお城まつり、岩松地区町並み保存、スマート農業導入支援、アコヤガイ研究、道の駅津島熱田温泉整備、デジタル相談窓口、宇和島フォトフェスティバル、新伊達博物館整備などが挙げられています。⁴
分野ごとに見ると、次のように整理できます。
| 令和7年度の実施予定 | 使い道の意味 |
|---|---|
| 備蓄物資整備 | 大規模災害に備え、市民の命と生活を守る |
| 学校教育活動支援員の配置 | 学校現場や子どもたちの学習環境を支える |
| うわじま土曜塾 | 子どもの学習機会を支える |
| 伊達なうわじまお城まつり | 歴史文化を活かしたにぎわいづくり |
| 岩松地区町並み保存 | 地域の歴史的景観を次世代へ残す |
| スマート農業導入支援 | 農業の効率化や担い手支援につなげる |
| アコヤガイ研究 | 宇和島の真珠産業を支える |
| 道の駅津島熱田温泉整備 | 観光や交流人口の拡大につなげる |
| デジタル相談窓口 | 市民サービスや行政手続きの利便性向上 |
| 宇和島フォトフェスティバル | 文化・アートを通じた地域の魅力発信 |
| 新伊達博物館整備 | 宇和島伊達家の文化財を後世へ伝える |
ここで注目したいのは、ふるさと納税が、市民生活の支援だけではなく、宇和島に来てもらう、宇和島を知ってもらう、宇和島を好きになってもらうための事業にも活用されている点です。
宇和島市は、ふるさと納税を単なる財源確保だけでなく、まちの魅力づくりや関係人口づくりにもつなげようとしているようです。
ふるさと納税は「ファンづくり」の入口にもなりうる
宇和島市の第3期まち・ひと・しごと創生総合戦略は、令和7年度からの3年間を計画期間として策定されたものです。⁵
この総合戦略全体の方向性を見ると、宇和島市は、人口減少対策や地方創生のために、宇和島に住む人だけでなく、市外の人との関係づくりも重視しているように読み取れます。⁵
ふるさと納税は、その入口の一つになりうる制度だと思います。
ふるさと納税をきっかけに、宇和島の産品を知る人が増える。
宇和島の事業に関心を持つ人が増える。
宇和島を応援したい人が増える。
こうした流れをつくることができれば、将来的には観光、移住、企業連携、地域産業の応援にもつながる可能性があるのではないでしょうか。
返礼品は単なる「お礼の品」ではなく、宇和島の魅力を知ってもらう最初の接点にもなります。
その意味で、ふるさと納税は「寄附制度」であると同時に、「宇和島を知ってもらう広報の仕組み」でもあるように感じます。
企業版ふるさと納税も、地域課題を一緒に解決する仕組みとして使われている
宇和島市は、企業版ふるさと納税についても情報を発信しています。⁶
企業版ふるさと納税について、宇和島市は「人口減少と少子高齢化が急速に進むなか、市を挙げて地方創生に向けた様々な地域課題に取り組んでいる」と説明しています。⁶
また、多様化・複雑化する課題の解決に向けて、市民や行政だけではなく、宇和島市の取り組みに共感する企業の理解や支援を受けながら、協働して進めていきたいという考えも示されています。⁶
令和6年度の企業版ふるさと納税実績報告書では、企業から304,056千円の寄附、物品寄附を含む寄附があったとされています。⁷
活用事業としては、地域イノベーション拠点整備事業、移住・定住促進事業、子育て支援事業、こども食堂運営事業、生活環境対策事業、地域防災力強化事業、芸術文化を活用した地域振興事業などが示されています。⁷
企業版ふるさと納税の活用先を整理すると、次のようになります。
| 活用事業 | 方向性 |
|---|---|
| 地域イノベーション拠点整備事業 | 地域課題解決や新たな事業づくり |
| 移住・定住促進事業 | 宇和島に住む人・関わる人を増やす |
| 子育て支援事業 | 子育て世帯の支援 |
| こども食堂運営事業 | 子どもの居場所や食の支援 |
| 生活環境対策事業 | 暮らしやすい地域環境づくり |
| 地域防災力強化事業 | 災害に強いまちづくり |
| 芸術文化を活用した地域振興事業 | 文化を通じた地域の魅力発信 |
この説明からは、宇和島市が企業版ふるさと納税を、単なる寄附集めではなく、企業との関係づくりや地域課題の共有の仕組みとして考えていることがうかがえます。
市民として確認したいこと
ふるさと納税は、宇和島市にとって大きな財源になっているようです。
一方で、市民としては、いくつか確認していきたい点もあります。
まず、寄附金がどの事業にどれだけ使われたのかを、今後もわかりやすく公表していくことが重要だと思います。
宇和島市は使い道や実施事業を公表していますが、事業ごとの成果や費用対効果がさらに見えるようになると、市民にも寄附者にも伝わりやすくなるのではないでしょうか。
次に、返礼品競争だけに偏らないことも大切だと思います。
返礼品は地域産業を知ってもらう大切な入口です。しかし、制度の本来の意義は、地域を応援する気持ちをまちづくりにつなげることにあると考えられます。
そして、ふるさと納税を活用した事業が、一過性のイベントで終わるのではなく、地域の課題解決、人材育成、産業の継続、関係人口づくりにつながっているかを検証していく必要があると思います。
特に、教育、防災、産業振興、歴史文化のような分野は、短期的な成果が見えにくい面もあります。
だからこそ、「実施した事業」だけでなく、「その事業によって何が変わったのか」まで見える形で発信していくことが、今後さらに重要になるのではないでしょうか。
まとめ
宇和島市のふるさと納税は、環境、防災、子ども、教育、産業、歴史文化など、幅広い分野に活用されているようです。
令和6年度には、56,443件、956,671,036円の寄附が集まっており、宇和島市にとって大きな財源になっていることがわかります。²
表で整理すると、宇和島市のふるさと納税は次のような使われ方をしていると考えられます。
| 大きな方向性 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 暮らしを守る | 環境整備、防災、生活衛生 |
| 子どもを育てる | 学習支援、遊具整備、教育活動 |
| 産業を支える | 販路開拓、創業支援、研究支援 |
| 文化を残す | 宇和島城、歴史文化資源の整備 |
| まちの魅力を高める | 観光、イベント、地域の発信 |
| 市外の人とつながる | 返礼品、企業版ふるさと納税、関係人口づくり |
その意味で、宇和島市は、ふるさと納税を「返礼品で寄附を集める制度」としてだけでなく、「宇和島を応援してくれる人とつながり、まちの未来につなげる制度」として活用しようとしているようです。
今後は、「いくら集まったか」だけでなく、「何に使われ、どのような成果が出たのか」を、市民にも寄附者にもよりわかりやすく示していくことが、さらに重要になっていくのではないでしょうか。
参考資料
- 宇和島市.「寄附金の使い道」宇和島市公式ホームページ, 2023年5月16日更新.
- 宇和島市.「令和6年度ふるさとうわじま応援基金(寄附の状況)」宇和島市公式ホームページ, 2025年5月1日更新.
- 宇和島市.「ふるさとうわじま応援事業(令和6年度実施)」宇和島市公式ホームページ, 2024年4月1日更新.
- 宇和島市.「ふるさとうわじま応援事業(令和7年度実施予定)」宇和島市公式ホームページ, 2025年4月1日更新.
- 宇和島市.「宇和島市総合戦略」宇和島市公式ホームページ, 2025年12月5日更新.
- 宇和島市.「企業版ふるさと納税によるご支援をお願いします。」宇和島市公式ホームページ, 2025年9月3日更新.
- 宇和島市.「令和6年度 企業版ふるさと納税 実績報告書」宇和島市, 2025年.
- 愛媛新聞.「ふるさと納税 最高更新」2026年5月2日 朝刊

