日本の空き家と宇和島市の空き家を考える——「実家をどうするか」は、家族だけでなく地域の課題でもある——

谷本一真
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主な参考資料:総務省統計局.(2024)「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」

今朝の新聞で「空き家、全国で900万戸」という記事を読みました。空き家の問題は、どこか遠くの話ではなく、宇和島市に住む私たちにとっても身近な問題です。この記事では、日本、愛媛県、宇和島市の空き家の割合、撤去費用、補助制度、そして空き家を放置することで起こりやすい問題について整理します。

1. はじめに

空き家というと、「誰も住んでいない家」というだけに見えるかもしれません。

しかし、空き家は時間が経つほど傷みやすくなり、雨漏り、倒壊、害虫、草木の繁茂、不法侵入、近隣トラブルなどにつながることがあります。国土交通省も、空き家になった場合は「しまう(除却)」「活かす(活用)」、または当面の間は適切に管理することが大切だと示しています⁷。

特に宇和島市のように高齢化が進む地域では、「親が元気なうちに実家のことを話し合う」ことが、これからますます大切になると感じます。

2. 日本、愛媛県、宇和島市の空き家率

総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は約900万戸で、空き家率は13.8%と過去最高となっています¹。

愛媛県でも空き家は増えており、2023年の空き家数は145,600戸、空き家率は19.8%です²。これは全国平均の13.8%を大きく上回っています。

さらに宇和島市を見ると、総住宅数40,620戸に対して空き家数は11,080戸、空き家率は27.3%です²。つまり、住宅のおよそ4戸に1戸以上が空き家という状況です。

地域総住宅数空き家数空き家率
全国約6,502万戸約900万戸13.8%
愛媛県736,800戸145,600戸19.8%
宇和島市40,620戸11,080戸27.3%

宇和島市では、賃貸用・売却用・二次的住宅を除いた、いわゆる使い道が決まりにくい空き家も7,890戸あり、その割合は19.4%とされています²。これは、単に「空いている家がある」というだけでなく、「活用や処分が進みにくい家が多い」という課題を示しているように感じます。

3. 宇和島市の空き家率が高いことの意味

愛媛県の資料では、県内市町の空き家率は西予市28.4%が最も高く、次いで宇和島市27.3%、今治市25.7%とされています²。

宇和島市の空き家率が高い背景には、人口減少、高齢化、相続後の管理困難、修繕費用の負担、売却や賃貸の難しさなどが関係していると考えられます。

宇和島市の空家等対策計画でも、人口減少、少子高齢化、核家族化、建物の老朽化、社会的ニーズの変化などにより空家が増加していると整理されています³。

ここで大切なのは、空き家の問題を「所有者だけの問題」として終わらせないことだと思います。

もちろん、管理責任は所有者にあります。しかし、倒壊のおそれ、衛生面の悪化、景観の悪化、防災上の支障などは、近隣住民や地域全体にも影響します³。

4. 空き家の撤去費用はどのくらいかかるのか

空き家を解体する場合、費用は建物の構造、広さ、接道状況、家財の量、重機が入れるかどうか、アスベストの有無などによって大きく変わります。

国土交通省の資料では、木造住宅の解体工事費は1坪あたり約3.5万円、50坪の木造住宅で約175万円程度が相場と示されています⁴。

あくまで目安ですが、木造住宅の場合は以下のように考えると分かりやすいです。

木造住宅の広さ解体費用の目安
30坪約105万円
40坪約140万円
50坪約175万円

ただし、これは建物本体の解体費用の目安です。実際には、家財道具の処分、ブロック塀、庭木、浄化槽、倉庫、狭い道での手作業、廃棄物処理費などが加わることがあります。

そのため、新聞記事にもあったように、親が元気なうちに「残すもの」「処分するもの」「家をどうするか」を話し合っておくことは、とても現実的な準備だと感じます。

5. 国、愛媛県、宇和島市の補助制度

空き家対策には、国、県、市町村の制度があります。

ただし、国の補助金が個人へ直接支払われるというより、市町村が制度を作り、その制度を通じて所有者や移住者が支援を受ける形が多いです。

区分主な制度・支援内容
空き家対策総合支援事業空き家の除却、活用、実態把握、所有者特定などに取り組む市町村を支援⁴
愛媛県空き家相談総合窓口・空き家対策ネットワーク空き家の相談、相続、登記、不動産、建築、管理などの相談体制を整備⁸
愛媛県・宇和島市移住者住宅改修支援事業県外からの移住者が空き家を購入・賃借して改修する場合などに補助⁶
宇和島市老朽危険空家除却事業補助金老朽化し危険性のある空き家の除却費用を補助⁵
宇和島市空き家バンク活用可能な空き家を移住・定住希望者につなぐ制度³

宇和島市の老朽危険空家除却事業補助金では、老朽化などにより倒壊のおそれがあり、周辺の生活環境の保全の観点から放置することが不適切な空き家に対して、除却費用の一部を補助しています⁵。

令和8年度の制度では、補助対象経費の5分の4以内、通常は上限80万円、離島の場合は上限160万円とされています⁵。

通常地域で上限80万円の場合、自己負担の目安は次のようになります。

解体費用補助額の目安自己負担の目安
100万円80万円20万円
150万円80万円70万円
175万円80万円95万円
250万円80万円170万円

ただし、すべての空き家が対象になるわけではありません。宇和島市の制度では、市内にあり、使用されていない状態が常態であること、不良度の測定基準を満たすこと、倒壊により道路や隣地へ悪影響を及ぼすおそれがあることなどの条件があります⁵。

また、工事費が50万円以上であること、市内業者が施工することなども条件に含まれます⁵。補助を受けたい場合は、必ず工事前に市へ相談する必要があります。

6. 活用できる空き家は「壊す」だけでなく「使う」選択肢もある

空き家は、すべて壊すべきものではありません。

まだ住める状態であれば、売却、賃貸、空き家バンクへの登録、移住者向け住宅、地域活動の場、店舗や交流拠点などとして活用できる可能性があります。

宇和島市では、県外から市内へ移住する方が、空き家を購入または賃借して住宅改修を行う場合、移住者住宅改修支援事業費補助金を利用できる場合があります⁶。

この制度では、働き手世帯は補助対象経費の3分の2以内で上限100万円、子育て世帯は補助対象経費の3分の2以内で上限400万円とされています⁶。

また、家財道具の搬出・処分・清掃についても、5万円以上の搬出等を対象に、補助対象経費の3分の2以内、上限20万円の補助があります⁶。

これは、空き家を「地域の負担」として見るだけでなく、「次に住む人へつなぐ資源」として考えるうえで重要な制度だと思います。

7. 空き家を放置すると起こりやすい問題

空き家を放置すると、次のような問題が起こりやすくなります。

問題内容
倒壊・外壁落下老朽化により、屋根、外壁、ブロック塀などが崩れる危険
衛生面の悪化ねずみ、害虫、悪臭、ゴミの放置など
景観の悪化草木の繁茂、建物の荒廃により地域の印象が悪くなる
防犯上の不安不法侵入、放火、犯罪の温床になる可能性
近隣トラブル枝のはみ出し、瓦の落下、雨どい破損、隣地への影響
資産価値の低下放置するほど修繕費が増え、売却や活用が難しくなる

国土交通省は、空き家を放置すると資産価値の低下だけでなく、地域に迷惑をかけるおそれがあると説明しています⁷。

宇和島市でも、管理不全な状態にある空き家について、特定空家等と認定し、助言・指導、勧告、命令、行政代執行を行うことができると説明しています⁵。

さらに、勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例の対象から除外される可能性があります³。つまり、空き家を放置することは「費用をかけずに済む」のではなく、結果的に負担が大きくなることもあると考えられます。

8. 親が元気なうちに話し合っておきたいこと

今回の記事で特に大切だと感じたのは、「親が元気なうちに準備する」という視点です。

実家のことは、子ども側からは切り出しにくい話題かもしれません。しかし、親が認知症になったり、施設入所や入院が必要になったり、相続が発生した後では、手続きが一気に難しくなることがあります。

早めに確認しておきたいことは、次の6つです。

準備内容
1. 実家をどうするか売る、貸す、残す、解体する、誰かが住むなど
2. 資産状況土地・建物の名義、固定資産税、借入、抵当権など
3. 重要書類登記、権利証、印鑑、マイナンバー、年金関係、通帳など
4. 民間サービス見守り、草刈り、家財整理、不動産相談、解体業者など
5. 施設や住み替え先高齢者施設、親族宅、サービス付き高齢者向け住宅など
6. 家財の整理残す物、譲る物、処分する物、思い出の品の扱い

大切なのは、「親の家をどう処分するか」という話だけにしないことです。

「これから安心して暮らすために、家のことを一緒に整理しておこう」という姿勢で話し合うことが必要だと思います。

ご実家が親御さん名義のままであるため、売却や手続きが簡単には進まず、現在は司法書士へ相談されているとのことでした。

こうしたお話を聞くと、「まだ大丈夫」と思っているうちに、家の名義や今後の住まい方、実家をどうするかについて、家族で少しずつ話し合っておくことの大切さを感じます。

会員様の中にも、今年、親御さんが脳卒中をきっかけに意思疎通が難しくなり、ご実家の売却について悩まれている方がいらっしゃいます。

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9. 宇和島市にとって空き家対策はまちづくりの課題

宇和島市の空き家率27.3%という数字を見ると、空き家対策は単なる住宅政策ではなく、まちづくり、移住定住、防災、防犯、景観、福祉とつながる課題だと感じます。

壊すべき空き家は早めに除却する。

使える空き家は、必要な人につなぐ。

所有者が困っている場合は、相談につなげる。

この3つを地域全体で進めていくことが必要ではないでしょうか。

特に宇和島市では、中心市街地、沿岸部、山間部、離島など、地域によって空き家の事情が異なります。道路が狭い場所、災害リスクが高い場所、相続人が市外に住んでいるケースなどもあるはずです。

そのため、空き家対策は一律の制度だけではなく、地域ごとの実情に合わせた支援が必要だと考えられます。

10. まとめ

日本の空き家は約900万戸となり、過去最多となっています¹。

愛媛県の空き家率は19.8%、宇和島市の空き家率は27.3%であり、宇和島市は全国平均を大きく上回る状況です²。

空き家は、放置すると倒壊、衛生面の悪化、景観の悪化、防犯上の不安、近隣トラブルにつながる可能性があります⁷。

一方で、早めに話し合い、制度を調べ、専門家や行政に相談することで、「壊す」「活かす」「管理する」という選択肢を持つことができます。

空き家は、家族の思い出が詰まった場所でもあります。

だからこそ、困りごとになってから慌てるのではなく、親が元気なうちに、家族で少しずつ話し合っておくことが大切だと感じます。

参考文献・参考資料

  1. 総務省統計局.(2024)令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果.
  2. 愛媛県.(2025)令和5年住宅・土地統計調査結果の概要.
  3. 宇和島市.(2020)宇和島市空家等対策計画(概要版).
  4. 国土交通省.(2021)国土交通省における空き家対策支援メニュー等.
  5. 宇和島市.(2026)令和8年度 宇和島市老朽危険空家除却事業補助金について.
  6. 宇和島市.(2025)宇和島市移住者住宅改修支援事業費補助金.
  7. 国土交通省.(2025)空き家対策 特設サイト.
  8. 愛媛県.(2025)えひめ空き家相談総合窓口.

ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan、JFA-B級
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。
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