全国植樹祭とは何か——愛媛開催をきっかけに、森を「植える・育てる・使う」意味を考える
今朝の新聞で、天皇皇后両陛下が愛媛県を訪問され、全国植樹祭に関連する行事が大きく取り上げられていました。正直なところ、私は全国植樹祭について詳しく知っていたわけではありません。そこで今回は、全国植樹祭とは何か、天皇皇后両陛下との関係、森林の役割、そして林業の意味について整理してみたいと思います。
はじめに
全国植樹祭という言葉を聞くと、「木を植える式典」という印象を持つ方も多いかもしれません。
しかし調べてみると、全国植樹祭は単なる植樹イベントではなく、森林や緑に対する国民的理解を深めるための大切な行事であることが分かりました。公益社団法人国土緑化推進機構によると、全国植樹祭は1950年から毎年春に開催されている国土緑化運動の中心的行事とされています¹。
愛媛県では、1966年に第17回大会が開催されており、2026年の第76回全国植樹祭えひめ2026は、60年ぶり2回目の開催となります²。
全国植樹祭とは
全国植樹祭は、豊かな国土の基盤である森林や緑に対する理解を深めるために、国土緑化推進機構と開催県が共催して行う全国規模の行事です¹²。
式典では、天皇皇后両陛下のご臨席を賜り、両陛下によるお手植え・お手播き、各種表彰、参加者による記念植樹などが行われます¹。
第76回全国植樹祭えひめ2026は、令和8年、つまり2026年5月17日(日)に、愛媛県総合運動公園で開催されました³。
ここで大切なのは、全国植樹祭が「木を植える日」で終わるものではないということです。植えた木を育て、森を守り、木材として活かし、また次の森を育てていく。その循環を社会全体で考えるきっかけになる行事だといえそうです。
天皇皇后両陛下と植樹祭の関係について
全国植樹祭では、天皇皇后両陛下がご臨席され、お手植えやお手播きをされることが大きな特徴です¹。
「お手植え」は苗木を植えられること、「お手播き」は種をまかれることを意味します。これは、森づくりを一時的なものではなく、未来へつないでいく象徴的な行為と受け止めることができると思います。
愛媛県の公式発表によると、両陛下は5月16日・17日の2日間、全国植樹祭へのご臨席に合わせて愛媛県を訪問され、長浜高校水族館の視察、平成30年7月豪雨の被災者とのご懇談、とべ動物園の視察、伝統工芸関係者とのご懇談なども予定されていました⁴。
このように見ると、全国植樹祭は「森」だけでなく、その地域の自然、災害の記憶、教育、産業、文化にも光を当てる行事なのだと感じます。
愛媛開催で注目したい樹種
第76回全国植樹祭えひめ2026では、愛媛県にゆかりのある樹種が、お手植え・お手播きの対象として紹介されています⁵。
| 区分 | 樹種 | 特徴 |
|---|---|---|
| お手植え | スギ(無花粉) | 愛媛県の林業・木材産業を支える主要樹種 |
| お手植え | クスノキ | 県内各地に巨樹・名木が残る長寿の樹木 |
| お手植え | クヌギ | 里山林を代表し、原木乾しいたけや炭にも関係する樹種 |
| お手植え | ヒノキ | 愛媛県が全国有数の生産地である主要樹種 |
| お手植え | タチバナ | 柑橘王国・愛媛にゆかりのある樹種 |
| お手植え | トキワバイカツツジ | 愛媛県固有の希少樹種。自生地は宇和島市の1か所のみ |
| お手播き | クロマツ | 愛媛県の木「まつ」の一種 |
| お手播き | ツブラジイ | 愛媛県内の照葉樹林を代表する樹種 |
| お手播き | ヤブツバキ | 開催地である松山市の花 |
| お手播き | イロハモミジ | 四国山地の秋を彩る樹種 |
特に、トキワバイカツツジが宇和島市に関係する希少樹種であることは、南予に住む私たちにとっても注目したい点です⁵。
全国植樹祭は、全国的な行事でありながら、その土地に根ざした自然や文化を再確認する機会にもなるのだと思います。
森林の役割
森林には、私たちの生活を支える多くの役割があります。林野庁は、森林の働きを「森林の有する多面的機能」として整理しています⁶。
| 森林の役割 | 内容 |
|---|---|
| 二酸化炭素の吸収・固定 | 樹木が光合成によってCO₂を吸収し、炭素として蓄える |
| 水源涵養 | 雨水を蓄え、洪水の緩和や河川流量の維持、水質浄化に関係する |
| 土砂災害防止・土壌保全 | 樹木の根や落葉が土壌を守り、土砂流出や崩壊を防ぐ |
| 生物多様性の保全 | 多様な生き物の生育・生息場所になる |
| 保健・レクリエーション | 森林浴、散策、リフレッシュ、教育の場になる |
| 文化機能 | 景観、祭礼、伝統文化、地域らしさを支える |
| 木材等生産 | 木材、きのこ、燃料材、工芸材料などを生み出す |
森林というと、どうしても「自然を守る」という面が強調されやすいですが、実際には水、防災、健康、文化、産業まで幅広く関係しています⁶。
日本の人工林は利用期を迎えている
日本の森林面積は国土の約3分の2を占め、そのうち約4割が人工林です。林野庁の令和6年度森林・林業白書では、日本の人工林の約6割が50年生を超え、本格的な利用期を迎えているとされています⁸。
これは、「木を切ること=悪いこと」と単純に考えるのではなく、どの森を、どのように管理し、どのように使い、次の森をどう育てるかを考える時期に来ているということだと思います。
もちろん、無計画な伐採や再造林されない伐採は問題です。しかし、適切な間伐、主伐後の再造林、木材利用がセットになれば、森林資源を循環させながら地域の産業や防災にもつなげていくことができます⁸。
林業の役割
林業の役割は、木を切ることだけではありません。
木を植える、育てる、間伐する、必要な時期に伐る、木材として使う、そしてまた植える。この循環を支えるのが林業です。
林野庁は、森林整備や木材利用を通じて、森林資源の循環利用を図ることの重要性を示しています⁸。
また、全国植樹祭の関連行事として、愛媛県久万高原町では第54回全国林業後継者大会が開催されました。この大会は、全国の森林・林業関係者が集まり、林業の振興や森づくりの重要性について意見交換し、林業の魅力を全国に発信することを目的としています⁹。
林業は、地域の仕事であり、防災であり、環境保全であり、次世代への責任でもあります。
特に中山間地域が多い愛媛県や南予にとって、森林や林業をどう守り、どう活かすかは、地域づくりとも深く関係していると感じます。
まとめ
全国植樹祭は、木を植える行事であると同時に、森を育て、森を使い、次の世代へつなぐことを考える行事です。
森林は、二酸化炭素を吸収するだけでなく、水を蓄え、土砂災害を防ぎ、生き物を育み、人の心身を癒し、地域の文化や産業も支えています。
一方で、森林は放っておけばよいものではありません。特に人工林は、植える、育てる、使う、また植えるという循環があってこそ、長く地域を支える資源になるのだと思います。
愛媛で60年ぶりに開催された全国植樹祭をきっかけに、私たちも身近な山や森について、少し立ち止まって考えてみてもよいのかもしれません。
参考文献
- 公益社団法人国土緑化推進機構. 全国植樹祭、全国育樹祭. 2026年5月17日閲覧.
https://www.green.or.jp/greening-events/shokuju-ikuju/ - 第76回全国植樹祭愛媛県実行委員会. 全国植樹祭について. 2026年5月17日閲覧.
https://www.syokujusai-ehime2026.jp/about.html - 第76回全国植樹祭愛媛県実行委員会. 第76回全国植樹祭えひめ2026. 2026年5月17日閲覧.
https://www.syokujusai-ehime2026.jp/ - 愛媛県. 天皇皇后両陛下の行幸啓に関する記者発表の要旨について. 2026年4月23日更新. 2026年5月17日閲覧.
https://www.pref.ehime.jp/page/144291.html - 第76回全国植樹祭愛媛県実行委員会. お手植え・お手播き樹種. 2026年5月17日閲覧.
https://www.syokujusai-ehime2026.jp/type.html - 林野庁. 森林の有する多面的機能について. 2026年5月17日閲覧.
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/tamenteki/ - 林野庁. よくある質問:森林の地球温暖化防止機能について. 2026年5月17日閲覧.
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/con_5.html - 林野庁. 令和6年度 森林・林業白書 第1部 第1章 第1節 森林の適正な整備・保全の推進. 2025年公表. 2026年5月17日閲覧.
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r6hakusyo_h/all/chap1_1_1.html - 愛媛県. 第54回全国林業後継者大会について. 2026年5月13日更新. 2026年5月17日閲覧.
https://www.pref.ehime.jp/page/109585.html

