サッカーは「身体操作」と「思考力」と「ロジック」のスポーツだと、改めて感じた
5月1日の愛媛新聞で、「体の使い方 学び真剣」というサッカー教室の記事を読みました。元ヴェルディ川崎総監督の李国秀さんが、今治東中等教育学校の選手たちに指導を行ったという内容でした。1
この記事を読んで、私はとても強く共感しました。
私がこれまでサッカーを経験し、指導してきた中で大切にしてきた感覚が、李さんの考え方に近い部分があると感じました。
やはりサッカーは、単に足が速い、体が強い、技術があるというだけのスポーツではありません。
サッカーは、身体操作と思考力、そして自分なりのロジックが重なり合うスポーツだと感じています。
目次
- 新聞記事を読んで感じたこと
- サッカーにおける「体の使い方」とは何か
- 感覚でプレーしていたことにも、選手なりのロジックがある
- ディフェンスは、相手の特徴を読むスポーツでもある
- 指導では「身体操作」と「考え方」をつなげたい
- まとめ
新聞記事を読んで感じたこと
記事の中では、李国秀さんが選手に対して「体の使い方」を指導している様子が紹介されていました。李さんの指導については、過去の記事でも「良い立ち方」「良いボールの持ち方」「いつスピードを上げるのか」といった言葉が紹介されています。2
この表現を見たとき、私はとても納得しました。
サッカーにおける「体の使い方」は、単なるフォームの問題ではありません。どこに立つのか、どちらを向くのか、ボールをどこに置くのか、相手との距離をどう保つのか。そうした要素がすべて重なって、初めてプレーになります。
つまり、身体操作は「動き方」だけではなく、「状況をどう見ているか」と深く関係しているのだと思います。
サッカーにおける「体の使い方」とは何か
サッカーの体の使い方というと、走り方、キックフォーム、ステップワーク、体幹の強さなどをイメージする方が多いかもしれません。
もちろん、それらも大切です。
しかし、サッカーの難しさは、相手がいて、味方がいて、ボールが動き、スペースが変化し続けるところにあります。李さんの「Leeドリル」でも、個人のスキルとして「立ち方」「ボールの持ち方」「足の出し方」などを扱い、その後に「個からグループへ」「グループからチームへ」と発展させる構成が示されています。3
これは、個人の身体操作だけで終わらず、グループやチームの中でその動きをどう使うかまで考えるということだと思います。
理学療法士として体を見る立場から考えても、サッカーの動きは、筋力だけでは説明できません。重心の位置、骨盤や胸郭の向き、足の置き方、視線、相手との距離感などが関係します。
そして、それらはすべて「次に何をするための準備なのか」とつながっています。
感覚でプレーしていたことにも、選手なりのロジックがある
私自身、現役でサッカーをしていたときは、すべてを言葉で整理してプレーしていたわけではありません。
むしろ、多くのことは感覚で行っていました。
ただ、今振り返ると、その感覚の中にも自分なりのロジックがあったように感じます。
例えば、ディフェンスでボールを奪いに行くとき、「この選手は縦に行きたがる」「この選手は中に切り返してくる」「この選手はプレッシャーを受けると後ろ向きになる」など、自分なりに相手の特徴を感じ取っていました。
それは、明確な言葉として整理されていたわけではありません。
しかし、感覚の中では「この状況なら、こうなる可能性が高い」という予測をしていたのだと思います。
つまり、感覚でプレーしているように見えても、そこには選手なりの経験則や独自の理論があるのではないでしょうか。
ディフェンスは、相手の特徴を読むスポーツでもある
私は、ディフェンスはとても知的なプレーだと感じています。
ボールを奪うためには、ただ強く当たればよいわけではありません。相手の体の向き、ボールの置き場所、利き足、視線、スピードの変化、サポートの位置などを見ながら、奪いに行くタイミングを探します。
相手が何をしたがっているのか。
どこに逃げたいのか。
どの瞬間にボールが体から離れるのか。
そうした情報をもとに、体を動かしていく必要があります。
スポーツ科学の分野でも、実際のプレーに近い環境の中で、見ることと動くことを結びつけて学ぶ重要性が指摘されています。代表的な学習デザインの考え方では、練習環境が実際の競技場面に近いほど、知覚と行動の結びつきを学びやすいとされています。4
また、エコロジカル・ダイナミクスの考え方では、判断や行動は選手個人の頭の中だけで完結するものではなく、選手と環境との関係の中で生まれるものと説明されています。5
この考え方は、サッカーの現場感覚にも近いと感じます。
選手は、止まった状況で考えているのではありません。相手、味方、ボール、スペース、時間が変化する中で、瞬間的に判断し、体を動かしています。
指導では「身体操作」と「考え方」をつなげたい
今回の記事を読んで、改めて感じたことがあります。
それは、育成年代の指導では、身体操作と思考力を切り離してはいけないということです。
走り方を教える。
ステップを教える。
ボールの置き方を教える。
キックの仕方を教える。
これらはとても大切です。
しかし、それだけで終わると、試合の中で使える技術にはなりにくいかもしれません。
大切なのは、「なぜその姿勢が必要なのか」「なぜその場所にボールを置くのか」「なぜ今スピードを上げるのか」を選手が少しずつ理解していくことだと思います。
李さんは、サッカーを通じて「聞く力」「見る力」「反省する力」「やってみるぞという気持ち」が身につくと話されています。6
この考え方も、とても大切だと感じます。
選手が指導者の言葉を聞き、周りを見て、自分で考え、やってみる。そして、うまくいかなかったことを振り返り、また挑戦する。
その繰り返しの中で、感覚が少しずつ言葉になり、言葉がまたプレーを変えていくのだと思います。
サッカーは、身体操作と思考力とロジックのスポーツ
サッカーには、感覚が必要です。
しかし、感覚だけでは再現性が低くなることがあります。
一方で、理論だけでもプレーは硬くなってしまうことがあります。
だからこそ、感覚とロジックの両方が必要なのだと思います。
「なんとなくできた」を、「なぜできたのか」に変えていく。
「なんとなく奪えた」を、「どの瞬間に奪えたのか」に変えていく。
「なんとなく抜けた」を、「相手の重心がどこにあったから抜けたのか」に変えていく。
こうした積み重ねが、選手の成長につながるのではないかと感じています。
日本サッカー協会も「Japan’s Way」を、全国のサッカー関係者と共有するナショナル・フットボール・フィロソフィーとして発信しています。7 日本サッカー全体としても、単なる技術や体力だけでなく、どのような選手を育てていくのかを考える時代に入っているのだと思います。
まとめ
今回の記事を読んで、改めてサッカーの奥深さを感じました。
サッカーは、身体を使うスポーツです。
しかし、ただ身体を動かすだけではありません。
相手を見て、味方を見て、スペースを見て、次の展開を予測しながら、身体を操作するスポーツです。
そして、その中には、選手一人ひとりの感覚や独自の理論があります。
私自身も、これまで感覚でプレーしてきた部分が多くありました。しかし、指導者として、また理学療法士としてサッカーに関わる中で、その感覚を少しずつ言葉にしていくことが大切だと感じています。
身体操作と思考力とロジック。
この3つをつなげながら、選手たちが自分で考えてプレーできるようにサポートしていきたいと思います。
参考文献・参考資料
- 愛媛新聞社. 「体の使い方 学び真剣 今治東中教校でサッカー教室 元V川崎総監督・李さん指導」. 『愛媛新聞』2026年5月1日朝刊, スポーツ1面. ※紙面記事のためURL未確認.
- 田崎健太. 第253回 新鮮だった李国秀の指導 ~楽山孝志Vol.6~. SPORTS COMMUNICATIONS. 2023.
- 株式会社エル・スポルト. 「すごいをさりげなく」全国3daysツアー. 2025.
- Pinder RA, Davids K, Renshaw I, Araújo D. Representative Learning Design and Functionality of Research and Practice in Sport. Journal of Sport & Exercise Psychology. 2011;33(1):146-155.
- Araújo D, Brito H, Carrilho D. Team decision-making behavior: An ecological dynamics approach. Asian Journal of Sport and Exercise Psychology. 2023;3(1):24-29.
- 鈴木智之. 戸田和幸の解説が分かりやすいのはサッカーを“言葉”で理解しているから/李国秀氏インタビュー(前編). COACH UNITED. 2014.
- 日本サッカー協会. Japan’s Way|JFA|日本サッカー協会. JFA.

