近所付き合いの減少と地域のまなざし|愛媛新聞を読んで考えてみました

谷本一真
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1. 今朝の愛媛新聞を読んで考えたこと

今朝の愛媛新聞を読んでいて、「近所付き合いがない」と答えた高齢者の割合に関する記事が目に留まりました。

令和8年版高齢社会白書では、日本の65歳以上の方のうち、「近所の人とのつきあいがない」と回答した割合は17.4%でした。これは、アメリカ8.4%、スウェーデン8.2%、ドイツ5.6%より高い割合とされています¹²。

この記事を読みながら、最近シニアの方と話したときの言葉を思い出しました。

「昔は、近所のおじちゃんやおばちゃんに普通に怒られよった」

「昔のガキ大将は、ガキ大将でもいいやつやった」

この言葉を聞いたとき、私は少し温かい気持ちになりました。

もちろん、昔の社会にも、今とは違う理不尽さや息苦しさはあったと思います。ですので、「昔に戻ればよい」と単純に考えることはできません。

それでも、その言葉の中には、地域の大人が子どもに関心を持ち、子ども同士の関係の中にも、どこかで人を見捨てない空気があったのではないかと感じました。

2. 近所付き合いが減るということ

近所付き合いが減ることは、単に「あいさつをする相手が減る」ということだけではないように思います。

昔の地域には、家庭でも学校でもない「第三のまなざし」があったのかもしれません。

悪いことをしたら、近所の大人に注意される。
困っていたら、誰かが気づいてくれる。
いつもと様子が違えば、「どうしたん?」と声をかけてもらえる。

「怒られていた」という言葉は、見方を変えれば「見てもらっていた」ということでもあります。

今の時代に、他人の子どもを強く叱ることは簡単ではありません。プライバシーの問題もありますし、価値観の違いもあります。けれど、「子どもを地域で見守る」という考え方そのものは、時代が変わっても大切なのではないかと思います。

3. 子どもたちをめぐる数字から見えること

最近、未成年に関わる痛ましい事件や、いじめ、不登校、子どもの自殺に関する報道を目にする機会が増えているように感じます。

ただし、ニュースで大きく取り上げられる出来事と、社会全体の傾向は分けて考える必要があります。印象だけで判断するのではなく、まずは公的な統計を見ておきたいと思います。

次の表にまとめてみました。

項目最新の主な数字見方
いじめ認知件数769,022件³過去最多水準
1,000人当たりいじめ61.3件³認知姿勢も影響
小中学校の不登校353,970人³過去最多
1,000人当たり不登校38.6人³割合でも増加
小中高生の自殺538人⁴1980年以降最多

文部科学省の令和6年度調査では、小・中学校の不登校児童生徒数は353,970人で、児童生徒1,000人当たりでは38.6人となっています³。子どもの数が減っている中でも、不登校は人数・割合の両方で大きな課題になっていると考えられます。

一方で、いじめについては注意が必要です。いじめの認知件数は769,022件ですが、文部科学省は、いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知することを肯定的に評価しています³。つまり、件数が増えたことは「いじめが悪化した」だけでなく、「学校が見つけようとしている」面も含まれていると考える必要があります。

子どもの自殺については、警察庁・厚生労働省の令和7年の自殺統計で、小中高生の自殺者数が538人とされ、統計のある1980年以降で最多となっています⁴。この数字は、とても重く受け止める必要があると思います。

4. 宇和島市で考える地域のつながり

この問題を、宇和島市のこととしても考えてみたいと思います。

宇和島市の年齢別人口を見ると、令和8年5月31日現在、市全体の人口は64,568人、65歳以上は27,048人、高齢化率は41.9%です⁵。地域別に見ると、吉田町48.1%、津島町48.0%、三間町43.4%と、特に高齢化率の高い地域もあります⁵。

次の表にまとめてみました。

地域人口高齢化率
宇和島市全体64,568人⁵41.9%⁵
旧宇和島市43,375人⁵39.4%⁵
吉田町7,798人⁵48.1%⁵
三間町5,102人⁵43.4%⁵
津島町8,293人⁵48.0%⁵

この数字を見ると、宇和島市では「地域のつながり」は、単なる人情の話だけではなく、防災、見守り、介護予防、子どもの育ちにも関わる大切な土台だと感じます。

宇和島市の地域福祉計画では、令和3年時点で506の自治会が組織され、自主防災組織は441組織とされています⁶。また、宇和島市は自治会について、地域社会の維持や南海トラフ地震をはじめとする災害時の共助の観点からも欠かせない存在と説明しています⁷。

一方で、宇和島市は、地域との関わりの希薄化や価値観の違いなどにより、自治会加入率が減少しているとも説明しています⁷。

つまり、地域のつながりは大切だと分かっていても、それを維持することが難しい時代になっているのだと思います。

5. 「昔の方がよかった」とは言い切れない

ここで気をつけたいのは、「昔は近所付き合いがあったから、子どもの問題が少なかった」と単純に結論づけないことです。

昔は、今ほど子どもの困りごとが見えていなかった可能性もあります。いじめという言葉の捉え方も、学校や社会の対応も、時代によって変わってきました。不登校についても、調査の仕方や社会の理解が変わることで、見える数字は変わります。

また、昔の地域社会には温かさがあった一方で、過度な干渉や同調圧力もあったかもしれません。近所の目が安心につながることもあれば、逆に息苦しさにつながることもあったはずです。

ですので、この記事で言いたいことは「昔に戻ろう」ということではありません。

大切なのは、時代が変わっても失ってはいけないものは何かを考えることだと思います。

6. 地域のまなざしが持っていた意味

私がシニアの方の言葉から感じたのは、昔の地域には「子どもは地域で育つ」という感覚が、今より自然にあったのではないかということです。

「ガキ大将でもいいやつだった」という言葉も印象的でした。

ガキ大将という言葉には、少し乱暴な響きもあります。しかし、その方が言いたかったのは、ただ強い子が弱い子を支配していたということではないと思います。

年下の子を連れて遊ぶ。
仲間の中で面倒を見る。
時にはけんかをしながらも、どこかで相手を見捨てない。

そうした子ども同士の関係性が、地域の中で自然に育っていたという意味だったのかもしれません。

社会的なつながりは、健康とも関係することが研究で示されています。Holt-Lunstadらのメタ分析では、社会的関係が強い人ほど生存可能性が高いことが示されました⁸。もちろん、この研究だけで「近所付き合いがあれば健康になる」と断定することはできません。ただ、人と人とのつながりは、安心して生きるための土台の一つと考えてよさそうです。

7. ここから考えたこと

今回の愛媛新聞の記事を読んで、私は「近所付き合いがない」という数字を、高齢者だけの問題としてではなく、子どもたちや地域全体の問題として考えました。

不登校、いじめ、自殺、孤独、孤立。これらをすべて「地域のつながりが弱くなったから」と説明することはできません。家庭、学校、経済状況、SNS、価値観の変化など、さまざまな要因が関係しているはずです。

それでも、地域の中に「気づいてくれる人」がいることは、とても大切だと思います。

近所のおじちゃんやおばちゃんに怒られる。
ガキ大将でも、どこか優しさがある。

そんな言葉には、今の社会が忘れかけている温かさが含まれているように感じました。

宇和島市は人口減少と高齢化が進んでいます。だからこそ、これからは「濃すぎる付き合い」ではなく、今の時代に合った「ゆるやかな見守り」が大切になるのではないでしょうか。

顔を見たらあいさつをする。
子どもの名前を少し覚える。
高齢の方の姿をしばらく見なければ気にかける。
地域の行事に、できる範囲で参加する。

そうした小さな関係性が、いざというときの支えになるのかもしれません。

8. まとめ

今回の記事で考えたことをまとめます。

  • 日本の65歳以上では、「近所の人とのつきあいがない」と答えた割合が17.4%でした¹²。
  • 文部科学省調査では、不登校児童生徒数やいじめ認知件数が過去最多水準となっています³。
  • 宇和島市の高齢化率は41.9%で、地域の見守りや支え合いの重要性は高まっていると考えられます⁵。
  • 昔に戻るのではなく、今の時代に合った「ゆるやかな地域のつながり」を考えることが大切だと思います。

時代は変わります。社会の仕組みも変わります。けれど、人が人の中で育ち、人が人に支えられて生きていくという部分は、これからも変わらないのではないでしょうか。

宇和島に暮らす一人として、地域のつながりを懐かしむだけでなく、今の時代に合った形で少しずつ残していけたらと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献・参考資料

  1. 愛媛新聞.(2026年6月13日)「日本の65歳以上 近所付き合い17.4%が『ない』」朝刊.
  2. 内閣府.(2026)令和8年版高齢社会白書 第1章第3節 3 人付き合いについて
  3. 文部科学省.(2026年3月5日)令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
  4. 警察庁・厚生労働省.(2026年3月)令和7年中における自殺の状況
  5. 宇和島市.(2026年6月1日作成)令和8年6月 年齢別人口
  6. 宇和島市.(2022)第3期宇和島市地域福祉計画
  7. 宇和島市.(2025年10月1日)新たに自治会に加入するとRUC POINTを受け取ることができます!
  8. Holt-Lunstad J, Smith TB, Layton JB.(2010)Social Relationships and Mortality Risk: A Meta-analytic Review.
ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan、JFA-B級
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。
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