中学生のサッカー選手は、観葉植物に似ている
中学生の選手は、同じ水の量では育たない
サッカーの指導をしていると、中学生の選手は「観葉植物」に似ていると感じることがあります。
観葉植物は、水をあげなさすぎると枯れてしまいます。
しかし、反対に水をあげすぎても根が腐ってしまうことがあります。¹

これは、中学生の選手への声かけにも似ていると思います。
声をかけなさすぎると、選手は不安になったり、自分の方向性を見失ったりすることがあります。
一方で、声をかけすぎると、自分で考える余白がなくなり、指導者の言葉を待つだけの選手になってしまうこともあります。
大切なのは、全員に同じ量の水を与えることではありません。
その選手にとって、今どのくらいの言葉が必要なのか。
どのタイミングで関わるべきなのか。
そこを見極めることが、育成年代の指導者に求められる大切な役割だと感じています。
サンスベリアのような選手
サンスベリアは、乾燥に強く、比較的たくましく育つ観葉植物です。
一方で、水をあげすぎると根腐れにつながることがあるため、過度な世話には注意が必要とされています。²
この植物は、少し距離を置いて見守ったほうが育つ選手に似ていると感じます。
自分で考える力があり、必要以上に言われると、かえってプレーが小さくなる選手です。
こういう選手には、練習中に細かく言い続けるよりも、ポイントを絞って伝えるほうがよい場合があります。
たとえば、
「今の判断はよかった。次は見る方向を少し早くしてみよう」
このくらいの一言で十分なこともあります。
指導者が心配して水をあげすぎると、選手の根が弱くなることがあります。
サンスベリアのような選手には、信じて待つ時間も必要なのだと思います。
ポトスのような選手
ポトスは、比較的育てやすく、環境に慣れるとつるを伸ばしながら成長していく観葉植物です。
明るい間接光を好みますが、環境への適応力もある植物として知られています。³
この植物は、安心できる環境の中で、じわじわ伸びていく選手に似ていると思います。
最初から大きく目立つわけではない。
でも、チームの雰囲気に慣れ、指導者や仲間との関係性ができてくると、少しずつ自分を出せるようになる選手です。
こういう選手には、急に強い刺激を与えるよりも、安心してチャレンジできる空気が必要です。
「失敗してもいいから、まずはやってみよう」
「今のチャレンジはよかった」
このような言葉が、ポトスのつるのように、少しずつ選手の可能性を伸ばしていくのだと思います。
モンステラのような選手
モンステラは、大きな葉を広げる存在感のある観葉植物です。
気根を使って登る性質があり、成長すると支えが必要になることもあります。⁴
この植物は、大きく伸びる可能性を持っている選手に似ています。
身体能力が高い。
技術がある。
発想も面白い。
しかし、自由に伸ばすだけでは、成長の方向がばらばらになってしまうことがあります。
こういう選手には、能力を抑え込むのではなく、支柱となる考え方を与えることが大切だと思います。
たとえば、
「うまい選手ほど、味方を生かせる選手になろう」
「自分が目立つだけではなく、チームが前進する選択を考えよう」
というような言葉です。
モンステラに支柱があることで大きく伸びやすくなるように、才能のある選手にも、考え方の支えが必要になることがあります。
スパティフィラムのような選手
スパティフィラムは、水が足りないと葉がしおれやすく、状態の変化が見た目に出やすい植物です。
この特徴は、感情や自信がプレーに出やすい選手を考えるときに、とてもわかりやすい例えになります。
少し強く言われただけで表情が沈む選手。
ミスを引きずりやすい選手。
でも、適切な一言でまた元気を取り戻す選手。
こういう選手には、指導者の言葉の温度がとても大切です。
もちろん、甘やかすという意味ではありません。
ただ、強い言葉を使う前に、その選手が今どの状態にあるのかを見極める必要があります。
「大丈夫。今のミスはチャレンジした結果だから、次に切り替えよう」
この一言で、もう一度顔を上げられる選手もいます。
ボストンファーンのような選手
ボストンファーンのようなシダ植物は、湿度や環境の影響を受けやすく、繊細に管理する必要がある植物として知られています。
この植物は、周りの雰囲気に大きく影響を受ける選手に似ています。
チームの空気がよければ、のびのびプレーできる。
でも、周囲の声が強すぎたり、安心感がなかったりすると、本来の力を出せなくなる。
こういう選手に必要なのは、厳しさよりも、まず安全にチャレンジできる環境かもしれません。
育成年代の指導では、選手本人だけを見るのではなく、その選手を取り巻く空気を見ることも大切だと思います。
仲間との関係。
チーム内での立ち位置。
失敗したときに、周囲がどのような反応をするのか。
そこまで含めて環境を整えることが、指導者の役割ではないかと感じます。

小学生は花、中学生は根を育てる時期
小学生年代は、花のように、たくさん愛情を注ぎながらサッカーの楽しさ(表面的な部分)を感じさせる時期だと思います。
「サッカーって楽しい」
「もっとボールを蹴りたい」
「仲間と一緒にプレーするのが好き」
このような感情を育てることが、将来の土台になると感じます。
一方で、中学生になると少し変わってきます。
もちろん楽しさは大切です。
しかし、ただ楽しいだけではなく、自分で考える力、我慢する力、仲間と関わる力、失敗から学ぶ力も必要になってきます。
中学生年代は、花を咲かせる前に、根を深くしていく時期なのかもしれません。
すぐに結果が出ない選手もいます。
今は目立たなくても、根が育っている選手もいます。
逆に、早く花が咲いているように見えても、根が浅ければ、次の年代で伸び悩むこともあるかもしれません。
だからこそ、指導者は目の前の結果だけで判断しすぎないことが大切だと思います。
指導者の役割は、選手に合った育ち方を見つけること
観葉植物は、種類によって育て方が違います。
日なたを好む植物もあれば、直射日光が苦手な植物もあります。
水をたっぷり必要とする植物もあれば、乾かし気味のほうが元気に育つ植物もあります。
肥料が必要な時期もあれば、あえて与えないほうがよい時期もあります。
選手も同じだと思います。
たくさん褒めたほうが伸びる選手。
少し厳しくしたほうがスイッチが入る選手。
考える時間を与えたほうが伸びる選手。
まず安心感が必要な選手。
指導者の役割は、全員に同じ言葉を同じ量だけ浴びせることではありません。
その選手がどのような植物なのかを見極めること。
今は水をあげる時期なのか、少し乾かす時期なのかを考えること。
光を当てるべきなのか、少し日陰で守るべきなのかを判断すること。
そこに、育成年代の指導の難しさと面白さがあると思います。
育てるとは、待つことでもある
選手を育てていると、すぐに変化を求めたくなることがあります。
もっと走ってほしい。
もっと声を出してほしい。
もっと考えてほしい。
もっと戦ってほしい。
そう思うことは、指導者として自然なことかもしれません。
しかし、植物が一日で大きくならないように、選手も一日で大きく変わるわけではありません。
大切なのは、毎日の小さな変化に気づくことだと思います。
昨日より少し顔が上がった。
前よりも一歩早く動けた。
失敗しても、次のプレーに向かえるようになった。
仲間に声をかけられるようになった。
そういう小さな芽を見逃さないことが、指導者にとって大切なのだと思います。
育てるとは、言葉をかけることだけではありません。
育てるとは、待つことでもあります。
まとめ
中学生のサッカー選手(12歳〜)は、観葉植物に似ていると思います。
水をあげなさすぎても枯れてしまう。
でも、水をあげすぎても根が腐ってしまう。
光が必要な選手もいれば、少し日陰で守る時間が必要な選手もいます。
だからこそ、指導者に必要なのは、選手一人ひとりの育ち方を見極める力だと思います。
選手を育てるということは、全員に同じ水を与えることではありません。
その選手に合った水の量、光の当て方、距離感を見つけていくことです。
すぐに花が咲かなくても、根が育っている選手がいます。
今は目立たなくても、環境が整えば大きく芽を出す選手がいます。
その可能性を信じて、適切なタイミングで、適切な量の言葉を届ける。
それが、育成年代の指導者にとって大切な関わり方ではないかと感じています。

参考文献・参考資料
- University of Minnesota Extension. Watering houseplants. 2022.
- Royal Horticultural Society. How to grow sansevierias. RHS.
- Royal Horticultural Society. Epipremnum. RHS.
- Royal Horticultural Society. Monstera deliciosa. RHS.
- Royal Horticultural Society. Peace lilies. RHS.
- Royal Horticultural Society. Pachira aquatica. RHS.

