成長期サッカー選手とオスグッド病:なぜ海外ではあまり問題にならないのか?
日本では中学生〜高校生のサッカー選手に多く見られる「オスグッド病」。
しかし、同じ成長期でもドイツや北欧ではオスグッドという概念があまり一般的でないといわれています。
その理由を「トレーニング文化」と「医療の考え方」から記事にします。
オスグッド病とは?
オスグッド病(Osgood–Schlatter disease)は、膝の脛骨粗面(膝のお皿の下)に起こる骨端症です。
成長期の選手は骨よりも筋・腱が先に硬くなりやすく、ジャンプやキックなどの動作で膝の付着部に繰り返しストレスがかかると、炎症や痛みが生じます。
成長期特有の「骨の成長に筋肉が追いつかない」状態で発生するのが特徴です。
ドイツや欧州では「病気」ではなく“自然な成長反応”
ヨーロッパでは、オスグッド病は**「成長過程で一時的に起こる現象」として扱われます。
ドイツ語では「Osgood-Schlatter-Krankheit」または「Tibiatuberositas-Apophysitis」と呼ばれますが、
医療現場では「disease(病気)」ではなく、“self-limiting condition(自然に治る状態)”**と説明されることが多いのです。
📘参考:
Gaulrapp H, Nührenbörger C (2022)
“The Osgood-Schlatter disease: a large clinical series with evaluation of risk factors, natural course, and outcomes”
👉 https://doi.org/10.1007/s00264-021-05178-z
この研究では1,000例以上の症例が報告され、多くは保存療法で自然軽快し、手術を必要とする例はほとんどないと結論づけられています。
欧州では「オーバーワーク」が少ない
ドイツやオランダのユースアカデミーでは、練習量や試合数が厳密に管理されています。
トレーニング負荷は年齢・成熟度に合わせて調整され、「週何時間以上練習してはいけない」など明確なガイドラインがあります。
つまり、成長期にオーバーワークする文化がそもそも少ないのです。
そのため、オスグッドなどの「過使用性障害(オーバーユース)」が重症化しにくい傾向があります。
📘参考:
Johnson D, Williams S, Bradley B, et al. (2023)
“Can we reduce injury risk during the adolescent growth spurt?”
👉 https://doi.org/10.1080/03014460.2023.2261854
この研究では、プレミアリーグのアカデミー選手に対して成長期の練習負荷を調整したところ、
非接触性の成長障害を最大92%減少させる効果が確認されました。
「痛みを我慢しない文化」と医療連携
欧州では、痛みが出た選手は「我慢せずに休む」ことが自然です。
理学療法士やドクターがクラブ内に常駐し、成長痛と過負荷障害を早期に区別して対応します。
また、学校やクラブの指導者も「休む=悪いことではない」という教育を受けており、
“No pain, no gain” ではなく “Train smart” という文化が根付いています。
日本でオスグッドが多い理由
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| トレーニング量 | 練習・試合数ともに多く、休養が少ない |
| 文化的背景 | 「痛みを我慢する」ことが美徳とされやすい |
| ケア体制 | 理学療法士やトレーナーが部活動に関わりにくい |
| 教育 | 成長痛と障害の違いを学ぶ機会が少ない |
このように、オスグッドは医学的な問題であると同時に、文化的な問題でもあります。
まとめ:成長期に必要なのは「量より質」
- オスグッドは「病気」ではなく、成長期特有の骨端核のストレス反応
- 海外では「痛みを我慢しない文化」と「練習量管理」により、重症化を防いでいる
- 日本では、休養・ケア・教育体制の見直しが鍵となる
成長期のケガを防ぐことは、未来のパフォーマンスを守ることにつながります。
今後、私はパーソナルトレーニングを展開予定です。動きの質にこだわり、正常な運動連鎖を引き出すようなトレーニングを提供しパフォーマンスアップに貢献したいと考えています。
PRIコンセプトを軸に、歩行から逆算されたトレーニングです。
歩きは全ての動作の土台となります。アスリートのための歩行トレーニングを提供していきます。
出典・参考文献
- Gaulrapp H, Nührenbörger C. The Osgood-Schlatter disease: a large clinical series with evaluation of risk factors, natural course, and outcomes. Int Orthop (SICOT). 2022.
👉 クリックで論文へ / URLリンク - Johnson D, Williams S, Bradley B, et al. Can we reduce injury risk during the adolescent growth spurt? Ann Hum Biol. 2023.
👉 クリックで論文へ / URLリンク

