ヤングケアラーについて、いま考えたいこと
主な出典・著者(メイン):こども家庭庁支援局虐待防止対策課/愛媛県保健福祉部/宇和島市保健福祉部こども家庭課
この記事は、5月12日の愛媛新聞の地軸において「ヤングケアラー」について言及されていました。私自身、深くヤングケアラーについて調べる機会がありませんでした。今回、その意味と日本の現状、愛媛県の調査結果、そして宇和島市で確認できる情報を整理しながら、地域として何を考えるべきかを考えます。
ヤングケアラーとは何か
ヤングケアラーとは、家族の介護や日常生活上の世話を、年齢や成長の段階に比べて重く担っている子ども・若者のことです。こども家庭庁は、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」として、国や地方公共団体が支援に努めるべき対象に位置づけています。¹
ここで大切なのは、家族の手伝いそのものが悪いという意味ではないということです。家庭の中で食器を片づけたり、きょうだいの面倒を見たりすることは、多くの家庭で自然に行われていることだと思います。
しかし、それが「学校に行けない」「勉強する時間がない」「友達と遊ぶ時間がない」「心や体の負担が大きい」という状態につながっている場合、子どもの成長や学びに影響する可能性があります。宇和島市も、ヤングケアラーについて、子どもの健やかな成長や発達に必要な時間が奪われたり、身体的・精神的負荷がかかったりする状態を問題として説明しています。⁴

どのようなことがヤングケアラーにあたるのか
ヤングケアラーが担っている可能性のある役割には、次のようなものがあります。
・食事の準備、洗濯、掃除などの過度な家事
・病気や障がいのある家族の介助
・祖父母や親の身の回りの世話
・家族の通訳や手続きの補助
・家計を支えるための過度な役割
こうした役割は、外から見ると「しっかりした子」「家族思いの子」と見えることもあると思います。だからこそ、本人も周囲も「支援が必要な状態」と気づきにくい面があります。宇和島市のホームページでも、子ども本人や家族に支援が必要という自覚がないケースが多く、表面化しにくい問題であると説明されています。⁴
日本の現在の実情
全国調査では、世話をしている家族が「いる」と回答した割合は、以下のように報告されています。²
区分|世話をしている家族が「いる」と回答した割合
小学6年生|6.5%
中学2年生|5.7%
高校2年生(全日制)|4.1%
大学3年生|6.2%
中学2年生で5.7%ということは、単純に考えると約17人に1人です。クラスの人数を30人前後と考えると、1クラスに1人程度、家族の世話を日常的に担っている子どもがいる可能性も考えられます。
ただし、この数字には、親が仕事で不在の間に幼いきょうだいの遊び相手をするようなケースも含まれており、すべてが深刻な支援対象という意味ではない点にも注意が必要です。²
大切なのは、「数字が多いか少ないか」だけではなく、その子どもが自分の時間、学ぶ時間、休む時間、友達と過ごす時間を失っていないかを見ていくことだと感じます。
愛媛県の実情
愛媛県は、県内の公立学校に通う小学5・6年生、中学生、高校生を対象に、子どもの生活に関する調査を行っています。調査では、「本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などをすること」を「お世話」とし、ちょっとした家事の手伝いなどは除く形で質問しています。³
愛媛県の調査結果では、世話をしている家族が「いる」と回答した割合は、以下の通りでした。³
区分|世話をしている家族が「いる」と回答した割合
小学生|10.4%
中学生|4.0%
高校生(全日制)|2.3%
高校生(定時制・通信制)|4.0%
小学生で10.4%という数字は、全国調査の小学6年生6.5%よりも高く見えます。ただし、調査対象や設問の細かな違いがあるため、単純に「愛媛県の方が深刻」と断定することはできません。
また、愛媛県の調査では、「ヤングケアラー」という言葉を「聞いたことがあり、内容も知っている」と回答した割合は、中学生で21.8%、全日制高校生で34.5%、定時制・通信制高校生で29.4%でした。一方で、「聞いたことはない」と回答した割合は、中学生で55.3%、全日制高校生で38.7%、定時制・通信制高校生で45.7%でした。³
この結果を見ると、私のように「言葉を知らなかった」という大人も少なくないと思いますし、子どもたち自身も、自分の状況をヤングケアラーとして認識していない可能性があると考えられます。
宇和島市の割合は公表されているのか
宇和島市については、私が確認できた公表資料の範囲では、宇和島市単独の「ヤングケアラーの割合」として明示された数値は確認できませんでした。
ただし、宇和島市の第3期地域福祉計画には、中学生アンケートの中で、次のような記載があります。⁵
項目|宇和島市の中学生アンケート結果
1日に平均3時間以上、家事を手伝っている生徒|1.5%
1日に平均5時間以上、家事を手伝っている生徒|0.4%
この数字は、「ヤングケアラーの割合」そのものではありません。あくまで「家事の手伝いに多くの時間を使っている中学生が一定数いる」という参考指標として見る必要があります。
しかし、1日に5時間以上という時間は、学校生活、学習、睡眠、友人関係、自分の好きなことに使う時間を圧迫する可能性があります。宇和島市の計画でも、5時間以上家事の手伝いをしている中学生がわずかながらみられることを踏まえ、学校や関係機関と連携したヤングケアラー対策やアウトリーチによる支援を検討する必要があるとしています。⁵
宇和島市で確認できる支援
宇和島市のホームページでは、ヤングケアラーかもしれないと思った場合や、ヤングケアラーと思われる子どもがいる場合には、相談窓口へ連絡するよう案内されています。相談先は、宇和島市要保護児童対策地域協議会、こども家庭課総合支援係内とされています。⁴
また、宇和島市では、家事や育児に不安や負担を抱える子育て世帯、妊産婦、ヤングケアラーがいる世帯を対象に、訪問による家事・育児支援を行う「子育て世帯訪問支援事業」も実施されています。⁶
支援内容には、食事の準備や片づけ、洗濯、住居の清掃、生活必需品の買い物、授乳やおむつ交換などの育児支援が含まれています。⁶
これは、ヤングケアラーを「子どもの問題」として見るのではなく、家庭全体を支える仕組みとして考えるうえで、とても重要な取り組みだと感じます。
ヤングケアラーの問題を家庭だけの責任にしない
ヤングケアラーの問題を考えるときに、家庭を責めるだけでは解決しないと思います。
介護が必要な家族がいる。
ひとり親で仕事と育児を抱えている。
障がいや病気のある家族を支えている。
地域の支援につながれていない。
こうした状況の中で、結果として子どもが大きな役割を担ってしまうことがあるのだと思います。
だからこそ大切なのは、「その家庭が悪い」と見ることではなく、「その家庭にどのような支援が足りていないのか」を社会全体で考えることではないでしょうか。
子どもは家族の一員であると同時に、子ども自身の人生を生きる存在です。勉強する時間、遊ぶ時間、友達と過ごす時間、ぼーっとする時間、将来を考える時間。そうした時間が守られることは、子どもの権利として大切にされるべきだと思います。
地域の大人が気づくことの大切さ
ヤングケアラーは、本人が「困っています」と言いにくい問題だと思います。
家族のことを悪く言いたくない。
自分が頑張ればよいと思っている。
相談すると家族が責められるのではないかと不安になる。
そもそも自分の生活が普通だと思っている。
こうした理由から、周囲に見えにくくなっている可能性があります。
だからこそ、学校、地域、医療、福祉、スポーツ、習い事など、子どもと関わる大人が「もしかしたら」と気づく視点を持つことが大切だと感じます。
たとえば、急に疲れている様子が増えた。
宿題や提出物が出せなくなった。
遅刻や欠席が増えた。
友達との関わりが減った。
いつも家族の予定を優先している。
こうした変化があったときに、すぐに決めつけるのではなく、安心して話せる関係をつくることが大切だと思います。
まとめ
私は、今回の記事を書くまで「ヤングケアラー」という言葉を十分に知りませんでした。
しかし調べてみると、全国でも、愛媛県でも、家族の世話を日常的に担っている子どもたちが一定数いることが分かりました。²³
宇和島市単独のヤングケアラー割合は、確認できた公表資料の範囲では明示されていませんでした。ただし、宇和島市の中学生アンケートでは、1日に平均3時間以上家事を手伝っている生徒が1.5%、5時間以上が0.4%いることが示されています。⁵
この数字だけで実態をすべて語ることはできません。けれど、見えにくいところで家族を支えている子どもがいるかもしれないという視点は、地域の大人が持っておく必要があると思います。
ヤングケアラーの問題は、家族を責めるための言葉ではなく、子どもの時間と成長を守るための言葉だと感じます。
地域の中で、子どもが安心して「少ししんどい」と言える環境をつくること。
家庭だけで抱え込まない支援につなげること。
そして、大人が子どもの小さな変化に気づくこと。
そうした積み重ねが、宇和島市で暮らす子どもたちの未来を守る一歩になるのではないでしょうか。
参考文献
- こども家庭庁. ヤングケアラーについて [Internet]. こども家庭庁; [cited 2026 May 14].
- こども家庭庁支援局虐待防止対策課. ヤングケアラー支援の現況 令和7年度 [Internet]. 2025 [cited 2026 May 14].
- 愛媛県保健福祉部. 愛媛県子どもの生活に関する調査 報告書 [Internet]. 2023 [cited 2026 May 14].
- 宇和島市. ヤングケアラーについて [Internet]. 2024 [cited 2026 May 14].
- 宇和島市. 第3期宇和島市地域福祉計画 [Internet]. 2022 [cited 2026 May 14].
- 宇和島市. 子育て世帯訪問支援事業について [Internet]. 2025 [cited 2026 May 14].

