トラッシュトークは、少年期のスポーツに必要なのか

谷本一真
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——18歳までのスポーツ指導で大切にしたい言葉の環境——

この記事では、スポーツ現場で耳にすることがある「トラッシュトーク」について、少年期の健全育成という視点から考えてみます。

私は、18歳までの子どもたちのスポーツにおいて、相手をあおる言葉や傷つける言葉を「駆け引き」として扱うことには、慎重であるべきだと考えています。

トラッシュトークとは何か

トラッシュ(trash)とは、英語で「ごみ」「不要なもの」という意味があります。また、動詞として使う場合には「人や物をけなす」「悪く言う」という意味もあります。¹

そのため、トラッシュトーク(trash talk)は、スポーツなどの競争場面で、相手を挑発したり、動揺させたり、自信を失わせたりする目的で使われる言葉を指します。

プロスポーツの世界では、心理戦やエンターテインメントの一部として語られることもあります。

しかし、少年期のスポーツにそのまま持ち込んでよいかというと、私は別の問題として考える必要があると思います。

子どもたちは、スポーツを通して技術だけでなく、人との関わり方、感情の扱い方、相手への敬意、勝敗との向き合い方を学んでいる時期だからです。

また、少年期は脳や心の機能が発達している途中です。不適切な言葉によって強い怒りや不安、恥ずかしさを繰り返し与えることは、心身の健全な発育にとって望ましくないのではないかと考えます。

少年期のスポーツは「勝つため」だけの場所ではない

少年期のスポーツは、勝利を目指す場であると同時に、人として成長する場でもあります。

スポーツ庁は、スポーツにおける暴力やハラスメントについて、健全なスポーツ活動や心身の成長を阻害する行為であり、断じて許されるものではないと示しています。²

また、スポーツ庁の資料では、暴力・ハラスメントを伴う指導を受けた子どもは、一時的に好成績を残せたとしても、健全な精神的発達に重大な影響を及ぼすおそれがあるとされています。³

トラッシュトークは、身体的な暴力ではありません。

しかし、相手の人格を否定する言葉、見下す言葉、恥をかかせる言葉、ミスを笑う言葉が含まれるのであれば、それは単なる「声かけ」ではなく、心理的な圧力やハラスメントに近づいてしまう可能性があります。

「強い選手になるために必要」という考え方への違和感

「相手に言われても動じないメンタルを育てるために、多少のトラッシュトークは必要だ」という考え方もあるかもしれません。

しかし、私はこの考え方には慎重でありたいと思っています。

強いメンタルとは、相手を傷つける言葉に慣れることではないと思います。

本当に育てたいのは、相手に敬意を持ちながら、自分のプレーに集中できる力です。

嫌な言葉を受け流す力を育てることと、嫌な言葉を使う文化を認めることは、まったく別の問題です。

子どもたちに必要なのは、相手を傷つける言葉を覚えることではなく、感情が高ぶった場面でも、自分の言葉を選べる力ではないでしょうか。

トラッシュトークがチーム文化に与える影響

トラッシュトークが日常化すると、チーム内でも似たような言葉が増えていく可能性があります。

最初は相手チームへの言葉だったものが、次第に味方のミスを責める言葉になったり、下級生をからかう言葉になったりするかもしれません。

国際オリンピック委員会のコンセンサス声明では、スポーツにおけるハラスメントや虐待には心理的なものも含まれ、すべてのアスリートには安全で、尊重され、公平で、暴力のない環境でスポーツを行う権利があるとされています。⁴

また、子どものスポーツに関する国際的なセーフガードでも、スポーツは子どもにとって安全な環境で行われるべきであり、暴力や虐待から守られる必要があるとされています。⁵

スポーツの場で使われる言葉は、チームの文化をつくります。

だからこそ、指導者は「どのような言葉を許すのか」「どのような言葉を注意するのか」を明確にしておく必要があると感じます。

少年期に大切にしたい言葉

私は、少年期のスポーツでは、相手を傷つける言葉ではなく、次のような言葉を大切にしたいと考えています。

場面避けたい言葉(過去)育てたい言葉(未来)
相手がミスをした時「下手やな」「またミスした」「次も集中しよう」
味方が失敗した時「何しよん」「お前のせい」「切り替えよう」「次、助ける」
試合で熱くなった時「弱い」「ビビっとる」「自分たちのプレーを続けよう」
相手と競り合う時「来るな」「無理やろ」「正々堂々勝負しよう」
勝った後「余裕やった」「弱かった」「ありがとうございました」

勝負に熱くなることは悪いことではありません。

むしろ、真剣に勝ちたいと思うからこそ、感情が動きます。

ただ、その感情をどのような言葉として外に出すのか。

そこに、スポーツを通した教育の大切さがあると思います。

指導者ができること

指導者は、子どもたちに「言ってはいけない言葉」をただ禁止するだけでなく、「なぜその言葉がよくないのか」を伝える必要があります。

指導者が伝えたいこと子どもへの伝え方
相手を傷つける言葉は使わない「勝負している相手は敵ではなく、成長させてくれる相手」
味方のミスを責めない「ミスを責めるより、次にどう助けるかを考えよう」
感情が高ぶった時ほど言葉を選ぶ「熱くなるのは良い。でも、相手を下げる言葉は使わない」
強さと乱暴な言葉は違う「本当に強い選手は、相手を尊重しながら戦える」
勝った後の態度も大切「勝った時こそ、相手への敬意が見える」

子どもは、大人の言葉をよく見ています。

指導者が審判に不満を言い続けたり、相手チームを見下すような言葉を使ったりすれば、子どもたちもそれを学んでしまいます。

だからこそ、指導者自身が、まず言葉の使い方を整える必要があると感じます。

「言葉の強さ」ではなく「プレーの強さ」を育てたい

スポーツでは、相手に勝つことを目指します。

しかし、相手を言葉で傷つける必要はありません。

相手を動揺させる言葉を覚えるよりも、良い準備をすること、判断を速くすること、走り切ること、仲間を支えること、自分のプレーに集中することの方が、少年期の選手にとって大切だと思います。

トラッシュトークによって相手を下げるのではなく、自分たちのプレーの質を高める。

そのようなチーム文化をつくることが、スポーツ指導者として大切な役割ではないでしょうか。

まとめ

トラッシュトークは、プロスポーツや大人の競技文化の中では、心理戦として語られることがあります。

しかし、18歳までの少年期のスポーツにおいては、健全育成の観点から、安易に認めるべきではないと私は考えています。

子どもたちは、スポーツを通して「勝ち方」だけでなく、「人との向き合い方」を学んでいます。

勝負にこだわること。

仲間と励まし合うこと。

相手を尊重すること。

感情が高ぶった時でも、言葉を選ぶこと。

これらを学べる場であるからこそ、少年期のスポーツには大きな価値があります。

私は、子どもたちには「相手を傷つける言葉」ではなく、「自分と仲間を前に進める言葉」を身につけてほしいと思います。

そして、指導者として、そのような言葉の環境をつくっていきたいと考えています。

参考文献・参考資料

  1. Merriam-Webster. TRASH Definition & Meaning. Merriam-Webster Dictionary.
  2. スポーツ庁. スポーツにおける暴力・ハラスメント等の根絶に向けた取組.
  3. スポーツ庁. 暴力・ハラスメントの防止. 2026.
  4. Mountjoy M, Brackenridge C, Arrington M, Blauwet C, Carska-Sheppard A, Fasting K, et al. International Olympic Committee consensus statement: harassment and abuse (non-accidental violence) in sport. Br J Sports Med. 2016;50(17):1019-1029.
  5. UNICEF UK. International Safeguards for Children in Sport. 2014.
ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan、JFA-B級
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。
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