論文の信憑性はどう見る?原著論文・レビュー論文・RCT・メタ解析を整理

谷本一真
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医学や運動、リハビリ、健康づくりに関する情報を調べていると、「論文ではこう言われている」「エビデンスがある」といった言葉を目にすることがあります。

しかし、論文といっても種類はさまざまで、すべての論文を同じように受け取ってよいわけではないと思っています。論文の信頼性を考えるときには、掲載されている雑誌の有名さや引用数だけでなく、どのような研究デザインで、どのような方法で行われ、結果がゆがみにくい形で検討されているかを見ることが大切です。1,5,6)

この記事では、論文を読むときに知っておきたい「原著論文」「レビュー論文」「RCT」「システマティックレビュー」「メタ解析」の違いを、整理していきます。

論文には大きく分けて「原著論文」と「レビュー論文」がある

論文は大きく分けると、「原著論文」と「レビュー論文」に分けて考えると整理しやすいです。1,4)

原著論文とは、研究者が新しくデータを集めて報告する論文です。たとえば、対象者を集めて運動介入を行ったり、ある集団を数年間追跡したり、患者さんの経過を詳しく報告したりする研究が含まれます。1,4)

一方、レビュー論文とは、すでに発表されている複数の研究を集めて、整理・評価する論文です。研究分野全体として、どのようなことが分かっているのかを把握するために役立ちます。1,2)

つまり、原著論文は「新しいデータを報告する論文」、レビュー論文は「すでにある研究をまとめる論文」と考えると分かりやすいと思います。

ただし、レビュー論文であっても、すべてが同じ信頼性を持つわけではありません。どのように論文を探したのか、どの基準で採用したのか、含まれた研究の質をどのように評価したのかによって、信頼性は変わってきます。1,2)

原著論文にはどんな種類があるのか

原著論文にも、いくつかの種類があります。代表的なものとして、RCT、コホート研究、症例対照研究、横断研究、症例報告、質的研究、動物実験・基礎研究などがあります。4)

RCTは、ランダム化比較試験と呼ばれます。対象者をランダムに分けて、介入の効果を比べる研究です。たとえば、筋トレを行う群と通常生活を続ける群を比較して、筋力や血圧、歩行能力などに違いが出るかを調べるような研究です。介入の効果を検討するときに重要な研究デザインとされています。1,4)

コホート研究は、ある集団を時間を追って観察する研究です。たとえば、筋肉量が少ない人は将来の死亡率が高くなるのか、歩行速度が遅い人は将来の介護リスクが高くなるのか、といった経過や予後を調べるときに使われます。4)

症例対照研究は、病気や転倒などが起きた人と起きていない人を比べて、過去の要因を調べる研究です。横断研究は、ある時点での状態や関連を調べる研究で、握力と歩行速度の関係、運動習慣と健康状態の関係などを調べるときに使われます。4)

症例報告は、1人または少数例の特徴的な経過を詳しく報告する論文です。エビデンスとしては強くない場合もありますが、臨床現場での気づきや新しい視点を得るきっかけになることがあります。4)

このように、研究デザインによって「何を知りやすいか」が違います。介入効果を見たい場合はRCT、将来の経過を見たい場合はコホート研究、ある時点での関連を見たい場合は横断研究というように、目的に合わせて論文の種類を確認することが大切です。1,4)

システマティックレビューとメタ解析は同じ意味ではない

レビュー論文の中でも、よく聞く言葉に「システマティックレビュー」と「メタ解析」があります。この2つは一緒に使われることが多いのですが、同じ意味ではありません。1,2,3)

システマティックレビューとは、ある研究疑問に対して、関連する論文を系統的に探し、採用する基準を決め、含まれた研究の質を評価し、結果を整理する方法です。Cochrane Handbookでは、システマティックレビューの方法論は、構造化され、透明性があり、再現可能な方法であることが示されています。1)

一方、メタ解析とは、複数の研究結果を統計的にまとめる方法です。つまり、システマティックレビューの中で、研究同士を統計的に統合できる場合に、メタ解析が行われることがあります。1,2)

簡単にいうと、システマティックレビューは「論文を探して、選んで、質を評価して整理する方法」、メタ解析は「複数の研究結果を統計的にまとめる方法」です。1,2)

また、システマティックレビューやメタ解析の報告を分かりやすくするためのガイドラインとして、PRISMAがあります。PRISMAは、なぜそのレビューを行ったのか、どのような方法を使ったのか、どのような結果が得られたのかを明確に報告するための指針です。3)

RCTよりメタ解析の方が必ず信頼できるのか

「RCTとメタ解析では、どちらが信頼できるのか」と疑問に感じる方も多いと思います。

一般的には、質の高いRCTを複数集めた、質の高いシステマティックレビューやメタ解析は、1本のRCTよりも全体像を把握しやすいと考えられます。複数の研究をまとめることで、1本だけでは分かりにくい傾向を確認しやすくなるためです。1,2)

ただし、メタ解析だから必ず信頼性が高いとは限りません。入っている研究の質が低かったり、対象者や介入方法が大きく異なっていたり、都合のよい論文だけが選ばれていたりすると、メタ解析全体の信頼性も下がる可能性があります。1,2)

そのため、「メタ解析だから上」「RCTだから下」と単純に考えるのではなく、最終的には中身の質を見る必要があります。質の低いメタ解析よりも、丁寧に行われた質の高いRCTの方が参考になることもあります。1,6)

論文の信憑性を見る5つの視点

論文の信憑性を考えるときには、インパクトファクターや引用数だけで判断しないことが大切です。Clarivateは、インパクトファクターを「その雑誌の平均的な論文が特定の期間にどのくらい引用されたか」を示す指標として説明していますが、同時に、インパクトファクターだけに依存すべきではないとも述べています。5)

また、DORAは、研究の評価において、ジャーナル指標ではなく科学的内容に基づいて評価することを提言しています。つまり、有名な雑誌に掲載されているかどうかだけで、個々の論文の価値を決めるべきではないということです。6)

論文を読むときには、次の5つの視点で確認すると整理しやすくなります。

1つ目は、研究デザインです。
RCTなのか、コホート研究なのか、横断研究なのか、システマティックレビューなのかを確認します。研究デザインによって、分かることが異なります。1,4)

2つ目は、結果がゆがみにくい方法で行われているかです。
たとえば、対象者の分け方に偏りがないか、途中で脱落した人が多すぎないか、都合のよい結果だけを示していないか、研究者や企業の利益が結果に影響していないかを確認します。1)

3つ目は、効果の大きさです。
p値だけを見るのではなく、実際にどのくらいの効果があるのか、信頼区間はどのくらい広いのか、臨床現場で意味のある差なのかを考える必要があります。1)

4つ目は、結果の一貫性です。
1本の論文だけでなく、他の研究やレビューでも似た結果が示されているかを確認します。1本だけ極端に違う結果が出ている場合は、慎重に解釈する必要があります。1,2)

5つ目は、補助的な指標です。
インパクトファクターや引用数は参考になりますが、それだけで論文の信頼性を判断するのは十分ではありません。あくまで補助的な情報として考えることが大切です。5,6)

論文を読むときに大切にしたい考え方

論文を読むときには、「この論文は何を明らかにしようとしているのか」を最初に確認することが大切です。

介入の効果を知りたいのか、将来のリスクを知りたいのか、ある時点での関連を知りたいのかによって、適した研究デザインは変わります。介入効果であればRCT、経過や予後であればコホート研究、研究全体の傾向を知りたいのであればシステマティックレビューやメタ解析が参考になりやすいと考えられます。1,2,4)

また、論文の結果を見るときには、「有意差があるかどうか」だけでなく、「どのくらいの差があるのか」「対象者は自分が知りたい人たちに近いのか」「現場で使える内容なのか」も考える必要があります。1)

特に運動療法やリハビリ、健康づくりの分野では、研究結果をそのまますべての人に当てはめるのではなく、対象者の年齢、疾患、生活背景、運動経験なども含めて考えることが大切だと思います。

まとめ

論文の信憑性を考えるときには、インパクトファクターや引用数だけではなく、研究デザイン、研究方法、結果がゆがみにくい形で検討されているか、効果の大きさ、結果の一貫性を確認することが大切です。1,5,6)

原著論文は、新しいデータを報告する論文です。レビュー論文は、すでにある研究を整理する論文です。1,4)

システマティックレビューは、論文を系統的に探して評価し、整理する方法です。メタ解析は、複数の研究結果を統計的にまとめる方法です。1,2,3)

質の高いRCTを複数集めた質の高いメタ解析は、信頼しやすい情報になりやすいと考えられます。しかし、メタ解析だから必ず信頼性が高いわけではありません。入っている研究の質や方法を確認することが大切です。1,2)

論文を読むときには、「どの種類の論文か」だけでなく、「どのような方法で行われたのか」「結果がゆがみにくい形で検討されているか」を意識することで、情報をより落ち着いて受け取ることができるのではないかと思います。

参考文献・引用文献

  1. Cochrane. Chapter 1: Starting a review. Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions. Available from: https://www.cochrane.org/authors/handbooks-and-manuals/handbook/current/chapter-01
  2. Cochrane. Chapter 10: Analysing data and undertaking meta-analyses. Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions. Available from: https://www.cochrane.org/authors/handbooks-and-manuals/handbook/current/chapter-10
  3. PRISMA. PRISMA statement. Available from: https://www.prisma-statement.org/
  4. National Library of Medicine. PubMed User Guide. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/help/
  5. Clarivate. The Clarivate Impact Factor. Available from: https://clarivate.com/academia-government/essays/impact-factor/
  6. DORA. Read the Declaration. Available from: https://sfdora.org/read/
ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan、JFA-B級
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。
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