体育館の冷房0%だった宇和島市はいま――学校統合・人口減少・教育環境を公的データで整理する

谷本一真
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9月23日の朝刊で、「学校統合や財源」「体育館冷房設置の地域差」が取り上げられていました。

では、私たちが暮らす宇和島市は、実際にはどのような状況なのでしょうか。

文部科学省、宇和島市、総務省統計局のe-Statなどを調べると、**2026年5月1日時点では、宇和島市の小中学校体育館等の空調設置率は0%**でした。ところが、その数字だけを見ると現在の状況を誤解してしまいます。

2026年度には、市内5中学校への空調整備に約3億円が計上され、9月現在、実際の工事発注も進んでいます。さらにその背景では、急速な人口減少と児童数の減少、学校統合が同時進行しています。

今回は「体育館にエアコンがあるか」という一点だけではなく、人口、学校統合、財政、子どもの運動環境まで含め、宇和島市の現在地を公的データから整理してみます。

主な資料:総務省統計局、愛媛県、文部科学省、スポーツ庁、宇和島市・宇和島市教育委員会

まず数字で見る宇和島市の現在地

現在の宇和島市を理解するうえで、まず押さえておきたい数字があります。

項目現状
2025年国勢調査人口(速報)62,715人
2020年からの人口減少8,094人減(−11.43%)
2026年度 小学生2,418人
2026年度 中学生1,476人
在籍児童がいる市立小学校20校
市立中学校6校
小中学校体育館等の空調設置率0%(2026年5月1日時点)
2026年度の中学校体育館空調整備5校・約3億円

2025年国勢調査の速報は政府統計e-Statで公表されており、愛媛県の地方集計では、宇和島市の人口は2020年の70,809人から2025年には62,715人へ減少しました。5年間で8,094人、率にして11.43%の減少です。¹,² (e-Stat)

学校については、2026年5月1日現在、小学生2,418人、中学生1,476人となっています。³ (宇和島市公式サイト)

この「人口減少」と「学校施設をどう維持するか」は、別々の問題ではなさそうです。

5年間で8,094人減少――学校の姿も変わり始めている

人口が11%以上減るということは、単純に住民の数が減るだけではありません。

特に学校では、出生数の減少が数年後の児童数に直接反映されます。

宇和島市が2024年に見直した「宇和島市立小中学校適正規模、適正配置等に関する基本方針」では、小学生について2024年度の2,735人から、2030年度には1,977人まで減少する推計が示されていました。⁴ (宇和島市公式サイト)

実際、2026年5月時点の小学生は2,418人です。³

2026年4月には、三浦小学校が番城小学校へ、蒋淵小学校が遊子小学校へ統合されました。⁵ (宇和島市公式サイト)

現在の市公式統計では、児童が在籍する小学校は20校で、竹ヶ島小、戸島小、嘉島小の3校は休校となっています。³

つまり宇和島では、「将来学校をどうするか」という段階だけではなく、すでに学校再編が進んでいる段階に入っています。

次に動いているのが津島地区の小学校統合

さらに現在、具体的な協議が進んでいるのが津島地区です。

宇和島市教育委員会によると、岩松小学校以外の5校では今後も複式学級の解消が見込めず、岩松小学校についても2032年度には複式学級が生じる見込みとされています。⁶ (宇和島市公式サイト)

2026年8月31日には「津島地区小学校統合準備協議会」が設置され、

岩松小・清満小・畑地小・北灘小の4校について、2028年4月の統合を目指す

という方向で準備が始まっています。⁶

一方、御槙小学校については統合への理解が得られておらず、引き続き協議するとされています。

また下灘小学校は、すでに一部の児童が通学に1時間弱を要していることから、さらなる通学時間の増加を避けるため、現時点では「学校存続」とされています。⁶

ここは重要だと思います。

学校統合は、「児童数が少ないから一つにまとめればよい」という単純な問題ではありません。

宇和島市のように市域が広く、半島部や山間部、離島を抱える地域では、学校規模だけでなく、通学時間、安全性、地域との関係まで考える必要があることが、市の方針からも読み取れます。⁴,⁶

体育館の冷房は、2026年5月時点でも「0%」

今回の新聞記事をきっかけに、最も気になったのが学校体育館の空調です。

文部科学省が2026年7月に公表した、2026年5月1日時点の調査を確認すると、宇和島市には調査対象となった体育館・武道場が29棟ありました。

その29棟はすべて避難所指定施設ですが、

空調設備設置数 0棟
空調設置率 0.0%

となっています。⁷ (文部科学省)

同じ調査では、避難所に指定されている全国の公立小中学校体育館等の空調設置率は33.1%でした。⁸ (文部科学省)

したがって、少なくとも2026年5月1日時点では、宇和島市の学校体育館への空調整備はまだ設備として完成していなかったことになります。

ただし、ここで「宇和島市は何もしていない」と判断するのは正確ではありません。

実際には2026年度から5中学校で整備が始まっている

宇和島市は2025年6月補正予算で、学校体育館への空調整備に向けた実施設計費7,300万円を計上しています。⁹ (宇和島市公式サイト)

当時示された整備計画は、

2025年度 実施設計
2026年度 中学校5校に設置
2027~2028年度 小学校11校に設置
2029年度以降 断熱性確保対策

というものでした。財源には国庫支出金2分の1と地方債を活用する計画です。⁹ (宇和島市公式サイト)

さらに2026年度当初予算では、吉田中学校を除く5中学校の体育館空調設備整備に約3億円が計上されています。吉田中学校については、学校そのものの改築事業の中で空調整備を行う計画です。¹⁰ (宇和島市公式サイト)

宇和島市の中学校は現在6校なので、対象となるのは、

城東中・城南中・城北中・三間中・津島中

の5校です。³,¹⁰

そして2026年9月14日時点では、「津島中学校体育館空調設備設置工事(機械)」が実際に一般競争入札の公告案件として掲載されています。¹¹ (宇和島市公式サイト)

つまり現在の状況を正確に表現すると、

2026年5月時点の設置率は0%だが、2026年度から中学校5校で整備が具体的な施工段階に入っている

ということになります。

数字の「0%」だけでは見えない部分です。

なぜ一気に全部の学校へ設置できないのか――財政も確認する

新聞記事では、自治体の「財政力」によって体育館空調の整備状況に差があることが指摘されていました。

では、宇和島市の財政力はどうでしょうか。

愛媛県が公表している2024年度決算の財政力指数は0.34です。¹² (愛媛県公式ウェブサイト)

財政力指数は、自治体の標準的な行政需要を、自ら確保できる税収などでどの程度賄えるかを見る代表的な指標です。1に近いほど自主的に確保できる財源が大きいことを意味します。

2024年度の宇和島市の歳入を見ると、

歳入総額 527.5億円
市税 79.6億円
地方交付税 173.7億円
自主財源 157.6億円

となっています。¹³ (宇和島市公式サイト)

単純計算すると、市税は歳入の約15%、地方交付税は約33%、自主財源全体でも約30%です。

ただし、これを「宇和島市の財政が危険」と読み替えることも適切ではありません。

市の2024年度財務書類では、住民1人当たり負債額は52.7万円で類似団体より少ない一方、有形固定資産減価償却率は67.1%で、類似団体より高いとされています。¹⁴ (宇和島市公式サイト)

つまり、財政を見る際には「借金の多さ」だけではなく、人口が減少する一方で、学校、道路、公共施設など既存インフラを更新していかなければならないという構造も考える必要がありそうです。

なお、今回確認した資料だけから「宇和島市の体育館空調が遅れた原因は財政力である」と断定することはできません。

国も体育館空調への支援を拡大している

体育館への空調整備は、自治体だけで全額を負担する仕組みではありません。

文部科学省の「空調設備整備臨時特例交付金」では、避難所に指定される公立小中学校などを対象に、空調整備費の2分の1を国が負担します。さらに地方債の充当率は100%、元利償還金の50%には地方交付税措置が設けられています。¹⁵ (文部科学省)

宇和島市の29棟は、文部科学省調査上すべて避難所指定施設です。⁷

そして2026年8月には、国は避難所となる公立小中学校体育館等の空調設置率100%という目標を、従来の2035年度から2031年度までに前倒しする方針を示しました。¹⁶ (文部科学省)

体育館の空調は、学校の暑さ対策だけではありません。

災害時に地域住民が長時間過ごす避難所をどう整えるかという、防災インフラの問題でもあるわけです。

子どもの「運動する場所」という視点も忘れたくない

今回、スポーツ庁の「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査」も併せて確認しました。

この調査は全国の小学5年生、中学2年生を対象とした調査であり、宇和島市だけの結果ではありません。¹⁷

全国では、体力合計点は前年度から改善したものの、中学校男子を除いてコロナ前の水準には戻っていません。また、運動時間が長い児童生徒ほど体力合計点が高い傾向が確認されています。¹⁷

添付資料の5ページを見ると、体育授業を除く1週間の総運動時間が420分以上の児童生徒は減少傾向で、反対に60分未満は増加傾向です。¹⁷

さらに平日の学習以外のスクリーンタイムが3時間以上の割合も増加しています。¹⁷

もちろん、この調査から「体育館にエアコンを設置すれば子どもの体力が向上する」とは言えません。

ただ、夏の暑さが厳しくなる中で、安全に身体を動かせる場所と時間を確保することは、これからの学校環境を考える一つの視点になると考えられます。

ここからは私なりの考察です

今回調べてみて、宇和島市の学校問題を「体育館にエアコンがない」という一点だけで考えるのは難しいと感じました。

人口は5年間で8,000人以上減り、児童数も減っています。そのため学校統合を進めながら、一方では残していく学校に数億円規模の設備投資を行う必要があります。

しかも、宇和島の場合は市域が広いため、学校を集約すれば必ず効率的になるとも限りません。

下灘小学校のように、通学時間を理由として存続する学校もあります。⁶

さらに体育館は、授業や部活動だけの施設ではなく、災害時には地域住民の避難所になります。

そう考えると、これから重要になるのは単純な「学校を残す・なくす」という二択ではなく、

どの学校を地域の拠点として長く使うのか。
そこにどの設備を、どの順番で整備するのか。
通学や防災まで含めて地域全体をどう設計するのか。

という視点なのかもしれません。

これは今回確認したデータから私が考えたことであり、行政資料そのものがこの結論を示しているわけではありません。

まとめ――宇和島は「0%」から整備が動き始めている

新聞記事を読んだ時、「宇和島市はどうなっているのだろう」と気になり調べてみました。

確認できた事実を整理すると、

2026年5月1日時点では、宇和島市の学校体育館等29棟の空調設置率は0%でした。⁷

しかし、2026年度には吉田中学校を除く5中学校に約3億円を投じて整備を進めており、9月現在、工事発注も確認できます。¹⁰,¹¹

その次には小学校11校への整備も計画されています。⁹

同時に、人口は2020年から2025年の5年間で11.43%減少し、学校統合も進んでいます。¹,²

つまり、現在の宇和島は、

「学校を統合する時代」と「残す学校へ新たな投資をする時代」が同時に来ている

と考えると、状況を理解しやすいのではないでしょうか。

体育館の空調だけを見るのではなく、人口、学校配置、通学、防災、財政、子どもの運動環境までつなげて考えていく。

今回の新聞記事は、宇和島のこれからの公共施設について考えるきっかけになりました。

参考文献・参考資料

  1. 総務省統計局.(2026)「令和7年国勢調査 速報集計 人口速報集計」e-Stat. 令和7年国勢調査 人口速報集計
  2. 愛媛県.(2026)「令和7年国勢調査 地方集計結果」. 令和7年国勢調査 地方集計結果
  3. 宇和島市学校教育課.(2026)「児童生徒数について」. 児童生徒数について
  4. 宇和島市教育委員会.(2024)「宇和島市立小中学校適正規模、適正配置等に関する基本方針」. 適正規模・適正配置等に関する基本方針
  5. 宇和島市学校教育課.(2026)「市立小中学校通学区域一覧」. 市立小中学校通学区域一覧
  6. 宇和島市教育委員会.(2026)「津島地区小学校の統合について」. 津島地区小学校の統合について
  7. 文部科学省.(2026)「公立学校施設の体育館等の空調(冷房)設備の設置状況について(令和8年5月1日現在)―設置者別・小中学校」. 体育館等空調設備設置状況(小中学校)
  8. 文部科学省.(2026)「公立学校施設の体育館等の空調(冷房)設備の設置状況調査」. 令和8年度 体育館等空調設備設置状況
  9. 宇和島市.(2025)「令和7年度6月補正予算説明資料」. 令和7年度6月補正予算説明資料
  10. 宇和島市教育委員会.(2026)「宇和島市教育委員会会議録―令和8年度当初予算・中学校屋内運動場空調設備整備事業」. 宇和島市教育委員会会議録
  11. 宇和島市.(2026)「事後審査型一般競争入札(建設工事)」. 事後審査型一般競争入札
  12. 愛媛県.(2025)「目で見て分かる市町財政(財政力指数)令和6年度決算」. 財政力指数(令和6年度決算)
  13. 宇和島市.(2025)「令和6年度 宇和島市の財政状況」. 令和6年度 宇和島市の財政状況
  14. 宇和島市財政課.(2026)「令和6年度財務書類」. 令和6年度財務書類
  15. 文部科学省.(2026)「公立学校施設における体育館等への空調整備」. 体育館等への空調整備・国庫補助制度
  16. 文部科学省.(2026)「避難所となる学校体育館等のエアコン設置率100%目標を4年前倒しに」. 学校体育館等の空調設置目標前倒し
  17. スポーツ庁.(2025)「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」. 令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果
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谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan、JFA-B級
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。
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