少子高齢化時代において30代の人口割合をみる事が重要ではないか?|愛媛5市の人口割合も参考にして
31歳で転職したときのことを、今でもよく覚えています。
理学療法士としての仕事をあらためて考えた時期であると同時に、「これから自分は何のために働いていくのか」を考えた時期でもありました。
10代、20代は、進学や就職をきっかけに地元を離れる人が多い年代です。私自身も一度は地元を離れています。
最近、人口減少についてTVなどで話されているときに、「若い人が地元を出ることそのものだけを問題にしてよいのだろうか」と感じることがあります。東京一極集中など、度々大学の数や転入や転出について議論されています。
むしろ気になるのは、学生が就職し一定の社会経験を積んだ20代後半から30代前半の時期にどこに住んでいるかです。
20代で一度外に出た人が、30代になったときに、どこに生活の拠点を置くのか。
今回は、総務省統計局の国勢調査と、松山市・四国中央市・宇和島市・八幡浜市・西予市が公表している人口資料をもとに、30代人口の割合を比べてみました¹⁻⁶。
あわせて、宇和島市では30代人口が近年どのように変化しているのか、Uターンや転入についてどのような特徴があるのかも調べてみました。
1.「30代人口割合」とは?
この記事では、
30代人口割合=30〜39歳人口 ÷ 総人口
として計算しています。
30代は、転職、結婚、出産・子育て、住宅取得など、生活の拠点に関わる選択が重なりやすい年代の一つです。
もちろん、「30代が多ければ地域が持続する」と単純に考えることはできません。
出生数、若者の転出、雇用、所得、住宅、教育、医療、交通など、地域人口にはさまざまな要因が関係します。
それでも、地域の年齢構成を見る一つの指標として「30代が総人口の何%いるのか」を確認することには意味があるのではないかと考えました。
2.愛媛5市で30代人口割合を比べてみる
今回は、松山市、四国中央市、宇和島市、八幡浜市、西予市を比較しました。
できるだけ同じ時期に近づけるため、2020年秋ごろの人口を用いています。
次の表にまとめてみました。
| 市 | 総人口 | 30〜34歳 | 35〜39歳 | 30代人口 | 30代割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 松山市 | 511,192人² | 24,465人² | 28,198人² | 52,663人 | 10.30% |
| 四国中央市 | 85,750人³ | 4,189人³ | 4,617人³ | 8,806人 | 10.27% |
| 宇和島市 | 73,490人⁴ | 2,628人⁴ | 3,297人⁴ | 5,925人 | 8.06% |
| 八幡浜市 | 31,987人⁵ | 1,180人⁵ | 1,379人⁵ | 2,559人 | 8.00% |
| 西予市 | 35,388人⁶ | 1,204人⁶ | 1,604人⁶ | 2,808人 | 7.93% |
数字を並べてみると、かなり興味深い違いがあります。
松山市と四国中央市では、人口のおよそ10人に1人が30代です。
一方、宇和島市・八幡浜市・西予市では、30代の割合はおよそ8%前後でした。
つまり、同じ愛媛県内でも、人口構成には一定の地域差があります。
特に興味深かったのは、松山市だけではなく、四国中央市も30代割合が比較的高かったことです。
四国中央市は製紙・紙加工業などの産業集積を持つ地域であり、市の資料でも製造業が地域産業の大きな位置を占めています³。
ただし、この数字だけを見て「産業があるから30代が多い」と因果関係まで言うことはできません。
今後、雇用者数、所得、転入・転出などを組み合わせて見る必要がありそうです。

3.宇和島市では30代人口がさらに減少している
では、宇和島市の30代人口はその後どうなっているのでしょうか。
宇和島市の住民基本台帳で、2020年8月31日と2026年8月31日を比較してみました⁴ ⁷。
次の表にまとめてみました。
| 宇和島市 | 2020年8月 | 2026年8月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 総人口 | 73,490人⁴ | 64,315人⁷ | 約▲12.5% |
| 30代人口 | 5,925人⁴ | 4,527人⁷ | 約▲23.6% |
| 30代人口割合 | 8.06% | 7.04% | ▲1.02ポイント |
| 65歳以上割合 | 39.2%⁴ | 42.0%⁷ | +2.8ポイント |
総人口そのものも大きく減っていますが、30代人口はそれ以上のペースで減っています。
2020年から2026年までに、総人口は約12.5%減少したのに対し、30代人口は約23.6%減少しました。
この数字を見ると、宇和島市では単純な「人口減少」だけでなく、年齢構成の変化にも目を向ける必要があるように感じます。
4.宇和島の30代は「ずっと住んでいる人」だけではない
一方で、宇和島市の30代について、別の興味深いデータがあります。
宇和島市が実施した「地域福祉の推進に関するアンケート調査」では、30代回答者136人の居住歴について、
- 生まれてからずっと宇和島市:28.7%
- 他市町村から転入:32.4%
- 一度市外へ出て戻ったUターン:39.0%
という結果でした⁸。
つまり、このアンケート回答者では、Uターンと市外からの転入を合わせると約7割になります。
この数字を見て、私自身の考え方も少し変わりました。
地方の人口問題というと、「若者を外へ出さない」という発想になりがちです。
しかし実際には、
一度外へ出ても戻ってこられること。
そして、
出身地ではなくても、暮らす場所として選んでもらえること。
この2つも重要なのかもしれません。
5.仕事は「戻る・移る」を考えるうえで大きな条件
JILPTのUIJターンに関する調査では、地方出身者のUターンは22歳前後の就職時だけでなく、その後も離転職や結婚などをきっかけに続いていることが報告されています⁹。
また、地方へ戻る際には、「求人が少ない」「収入が下がる」「希望する仕事が見つからない」といった仕事面の不安が多く挙げられています⁹。
内閣官房が2020年に実施した地方移住に関する意識調査でも、働き口や賃金、生活利便性などが地方移住を考える際の大きな要因として示されています¹⁰。
つまり、地元への愛着があったとしても、実際に生活できる仕事や所得がなければ、「戻る」という選択は難しくなる場合があります。
宇和島市でも現在、移住者や子育て世帯の住宅取得を支援する「住むなら宇和島応援金」などの施策が行われています¹¹。
こうした支援とあわせて、雇用、所得、住宅、子育て、教育、交通などを総合的に見ていく必要がありそうです。

6.留意しておきたいこと(断定はできません)
今回の比較には、いくつか重要な注意点があります。
まず、5市の数字は完全に同じ統計ではありません。
松山市・八幡浜市・西予市は2020年国勢調査、四国中央市は2020年9月末、宇和島市は2020年8月末の住民基本台帳を使っています²⁻⁶。
時期は近いものの、統計の定義は同一ではありません。
そのため、たとえば松山市10.30%と四国中央市10.27%の差を「松山市の方が高い」と細かく評価することは適切ではないと思います。
むしろ、
松山・四国中央は約10%台、宇和島・八幡浜・西予は約8%前後
という大きな傾向を見る比較だと考えた方がよさそうです。
また、2020年の30代と2026年の30代は同じ人を追跡しているわけではありません。
2020年に39歳だった人は2026年には45歳になっています。
そのため、「30代人口が23.6%減った=30代の23.6%が転出した」という意味ではありません。
世代人口の大きさや転入・転出などが複合的に影響しています。
7.ここから考えたこと
今回、5市を並べてみて印象に残ったのは、同じ愛媛県の中でも30代人口割合に差があることでした。
とくに、
松山市だけではなく、四国中央市にも30代が比較的多い
という点は、もう少し深く調べてみたいと思いました。
そこに仕事の種類や所得、企業数、住宅価格、交通環境などがどの程度関係しているのか。
また、宇和島・八幡浜・西予といった南予地域では、30代が地元に戻るときにどのような条件が必要なのか。
人口だけを見るのではなく、
「なぜ、その地域に住むのか」
まで調べていく必要があると感じます。
10代、20代で一度外の世界を見ること自体は、私は悪いことではないと思っています。
大切なのは、30代になり、
「地元へ戻りたい」
「ここで働きたい」
「ここで子育てをしたい」
「ここで家を持ちたい」
と思ったときに、その選択が現実的にできる地域であるかどうかではないでしょうか。
もちろん、地政学的に有利な場所である松山(県庁所在地)や四国中央市(香川県や他県にアクセスしやすい)の優位性はあると思います。
ただし、地元で過ごす10代の学生に、手厚いサポートをすることが相互作用になるのでないかと思っています。
少子高齢化を考えるとき、出生数や高齢化率だけでなく、
「30代が地域人口の何%いるのか」
という数字も、地域の現在地を見る一つの指標として追いかけてみたいと思います。
8.まとめ
- 愛媛5市を比較すると、2020年秋ごろの30代人口割合は、松山市・四国中央市が約10%台、宇和島市・八幡浜市・西予市が約8%前後でした。
- 宇和島市では、30代人口が2020年8月の5,925人から2026年8月の4,527人へ減少しています。
- 宇和島市のアンケートでは、30代回答者の39.0%がUターン、32.4%が他市町村からの転入でした。
- 30代人口割合だけで地域の持続可能性を判断することはできませんが、仕事、所得、住宅、子育て環境などと一緒に見ることで、地域の特徴がより見えてきそうです。
今後は、5市について転入・転出、雇用、所得まで比較してみると、30代がどこに根を下ろすのか、その背景をもう少し具体的に考えられるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献・参考資料
- 総務省統計局. 令和2年国勢調査 人口等基本集計 男女,年齢(各歳),国籍総数か日本人別人口 [Internet]. 東京: 総務省統計局; 2021 [cited 2026 Sep 20].
- 松山市. 令和6年度版 松山市統計書 [Internet]. 松山: 松山市; 2025 [cited 2026 Sep 20].
- 四国中央市. 一般廃棄物(ごみ)処理基本計画―年齢別人口構成 [Internet]. 四国中央: 四国中央市; 2023 [cited 2026 Sep 20].
- 宇和島市. 年齢別人口 令和2年8月31日現在 [Internet]. 宇和島: 宇和島市; 2020 [cited 2026 Sep 20].
- 八幡浜市. 令和2年国勢調査 年齢別人口 [Internet]. 八幡浜: 八幡浜市; 2021 [cited 2026 Sep 20].
- 西予市. 西予市公営住宅等長寿命化計画―令和2年国勢調査5歳階級別人口 [Internet]. 西予: 西予市; 2023 [cited 2026 Sep 20].
- 宇和島市. 年齢別人口 令和8年8月31日現在 [Internet]. 宇和島: 宇和島市; 2026 [cited 2026 Sep 20].
- 宇和島市. 宇和島市 地域福祉の推進に関するアンケート調査 報告書 [Internet]. 宇和島: 宇和島市; 2021 [cited 2026 Sep 20].
- 労働政策研究・研修機構. UIJターンの促進・支援と地方の活性化―若年期の地域移動に関する調査結果― 調査シリーズ No.152 [Internet]. 東京: 労働政策研究・研修機構; 2016 [cited 2026 Sep 20].
- 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局. 東京圏、地方での暮らしや移住及び地方への関心に関する意識調査 [Internet]. 東京: 内閣官房; 2020 [cited 2026 Sep 20].
- 宇和島市. 住むなら宇和島応援金 [Internet]. 宇和島: 宇和島市; 2026 [cited 2026 Sep 20].

