子どもとSNSをどう守るか——「禁止」だけではなく、企業責任・家庭・地域で考える

谷本一真
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主な参考資料:愛媛新聞.「イチからQ 子どもとSNS」2026年7月10日 朝刊, 特集12面.

2026年7月10日の愛媛新聞では、子どものSNS利用をめぐる世界の規制、日本の議論、SNS運営企業の責任について大きく取り上げられていました¹。SNSは、子どもにとって友人との交流、情報収集、学習、自己表現の場になっています。一方で、いじめ、犯罪、依存、心の健康への影響など、見過ごせない課題もあります。

1. SNSは、子どもの生活の一部になっている

SNSを「子どもに使わせるべきか、禁止すべきか」という議論は、とても難しい問題です。

なぜなら、SNSは単なる遊び道具ではなく、友達との連絡、学校や部活動の情報共有、趣味の交流、学習、社会との接点にもなっているからです。一方で、子どもは発達の途中にあり、強い刺激、承認欲求、比較、匿名の攻撃、見知らぬ大人との接触などから影響を受けやすい面もあります。

こども家庭庁の令和7年度調査では、インターネットを利用している青少年の平日1日あたりの平均利用時間は約5時間27分、高校生では約6時間44分とされています³。さらに、スマートフォンを利用する青少年のうち、こども専用のスマートフォンを使っている割合は93.3%で、小学生でも74.9%、中学生で95.4%、高校生で99.1%と報告されています³。

つまり、今の子どもたちにとって、スマートフォンやSNSは「たまに使うもの」ではなく、「日常の中にあるもの」になっているといえそうです。

2. 愛媛新聞の記事で整理されていた大きな論点

今回の愛媛新聞の記事では、子どものSNS利用について、主に次のような論点が整理されていました¹。

論点記事で示されていた内容考えたいこと
年齢制限オーストラリアでは16歳未満のSNSアカウント利用を制限する法律が始まった日本でも一律禁止が必要なのか
日本の対応日本では年齢による一律制限は見送り、年齢確認を厳格化する方向「禁止」よりも現実的な安全対策が必要ではないか
いじめ・犯罪SNSがいじめや犯罪の入り口になる懸念がある子どもを孤立させず、相談できる仕組みが必要
企業責任米国ではSNS運営企業の責任を問う訴訟が起きている家庭任せではなく、企業の設計責任も問うべきではないか
SNSの効用SNSは孤立した子どもにとって、つながりの場にもなる危険だから完全に切り離す、だけでは解決しない

この記事を読んで私が感じたのは、子どもとSNSの問題は「家庭のしつけ」だけでは解決できないということです。家庭、学校、地域、行政、そしてSNSを運営する企業が、それぞれ責任を分担する必要があると思います。

3. 日本の現状:スマホは「共有」から「専用」の時代へ

子どものSNS利用を考えるうえで大切なのは、スマートフォンがすでに子ども一人ひとりの手元にあるという現実です。

e-Statにも掲載されている「青少年のインターネット利用環境実態調査」は、青少年が安全にインターネットを利用できる環境整備のために行われている政府統計です²。この調査の令和7年度速報では、インターネットを利用している青少年のスマートフォン専用率が高く、特に中学生以降ではほぼ自分専用の端末を持つ状況になっています³。

これは、親が横で見守りながら使う時代から、子どもが自分の部屋、自分の時間、自分の判断でインターネットに接続する時代になったということです。

もちろん、専用スマートフォンを持つこと自体が悪いわけではありません。連絡手段としても、防災・防犯の面でも、学習の面でも役立つ場面があります。ただ、専用端末になるほど、大人の目が届きにくくなることは事実です。

4. なぜSNSが問題になるのか:いじめ・犯罪・依存・自己評価

SNSの問題は、単に「長時間使うから悪い」という話ではないと思います。

重要なのは、何を見ているのか、誰とつながっているのか、どのような反応を求めているのか、そして困った時に誰へ相談できるのかです。

警察庁は、SNSは匿名性が高く、見知らぬ相手と容易に連絡を取り合える特性があるため、児童買春や児童ポルノなどの悪質な事犯の「場」として悪用されている実態があると説明しています⁵。令和6年中のSNSに起因する事犯の被害児童数は1,486人で、近年も高い水準で推移しているとされています⁵。

また、心の健康の面でも注意が必要です。米国の公衆衛生局長官による勧告では、SNSが子どもや思春期の若者にとって十分に安全であるとは結論づけられておらず、心の健康への影響について強い懸念が示されています⁶。さらに、若者を対象としたシステマティックレビュー・メタ分析では、「問題のあるSNS使用」は、抑うつ、不安、ストレスと関連することが報告されています⁸。

ただし、ここで注意したいのは、「SNSを使うと必ず心の病気になる」と断定できるわけではないという点です。研究で示されているのは、主に関連であり、因果関係を一つに決めつけることはできません。睡眠、家庭環境、学校生活、友人関係、自己肯定感、運動習慣など、さまざまな要因が重なって子どもの心の状態は形づくられると考えられます。

5. オーストラリアの規制から見えること

愛媛新聞の記事でも紹介されていたように、オーストラリアでは16歳未満の子どもが年齢制限対象のSNSアカウントを作成・保持できないよう、プラットフォーム側に合理的な措置を求める制度が始まっています¹。

オーストラリアのeSafety Commissionerによると、2025年12月10日から、年齢制限対象のSNSプラットフォームは、16歳未満のオーストラリアの子どもがアカウントを作成・保持しないよう合理的な措置を取る必要があります⁴。ここで重要なのは、罰則の対象が子どもや保護者ではなく、合理的な対策を取らない事業者側に向けられている点です⁴。

つまり、これは「子どもを罰する制度」というより、「子どもを守るために企業へ責任を求める制度」と考える方が近いかもしれません。

一方で、年齢確認を厳しくすれば、個人情報やプライバシーの問題も出てきます。また、子どもが年齢を偽ったり、別のサービスへ移ったりする可能性もあります。UNICEFも、年齢制限だけでは子どもをオンライン上の危険から十分に守ることはできず、プラットフォームの設計改善や子どもの権利への配慮が必要だと指摘しています⁷。

6. 「禁止か自由か」だけで考えない方がよい

ここからは、私自身の考察です。

私は、子どものSNS利用を「禁止か自由か」の二択だけで考えると、現実から少し離れてしまうように感じます。

もちろん、年齢や発達段階によっては、強い制限が必要な場面もあると思います。特に小学生や中学生では、見知らぬ人とのやり取り、位置情報、顔写真の投稿、夜間利用、課金、性的な誘導などについて、大人が具体的に関わる必要があります。

しかし、SNSを完全に取り上げるだけでは、子どもが困った時に相談できる場や、趣味を共有できる場、孤立を防ぐつながりまで失ってしまう可能性があります。特に地方では、同じ趣味を持つ人が身近に少ないこともあります。そのような子どもにとって、オンラインのつながりが支えになることもあると思います。

大切なのは、SNSを「悪」と決めつけることではなく、危険な使い方と、生活を支える使い方を分けて考えることではないでしょうか。

7. 運営企業の責任をもっと考える必要がある

愛媛新聞の記事で特に重要だと感じたのは、SNS運営企業の責任という視点です¹。

これまで、SNS上で起きるトラブルは、利用者同士の問題として扱われがちでした。しかし、SNSは単なる掲示板ではありません。おすすめ表示、通知、いいね、ショート動画、無限スクロール、フォロワー数の可視化など、子どもが長く使いたくなる仕組みが組み込まれています。

つまり、問題は「子どもが勝手に使いすぎている」というだけではなく、「使い続けたくなるように設計されている」という側面もあります。

視点家庭で対応できること家庭だけでは難しいこと
利用時間使用時間を決める、寝室に持ち込まない無限スクロールや通知設計そのもの
有害情報フィルタリング、親子で確認するアルゴリズムによる連続表示
いじめ相談しやすい関係をつくる匿名アカウント、拡散、削除対応
犯罪被害知らない人と会わないルール悪質アカウントの排除、年齢確認
心の健康睡眠・運動・会話を守る承認欲求を刺激する設計

家庭の努力はもちろん大切です。しかし、家庭だけでSNS企業の設計やアルゴリズムに対抗することは難しいと思います。だからこそ、企業責任、制度設計、学校教育、地域での見守りを同時に考える必要があります。

8. 家庭・学校・地域でできる具体策

子どものSNS利用について、すぐにできることを整理すると、次のようになります。

場面具体策目的
家庭スマホを寝室に持ち込まない時間を決める睡眠を守る
家庭通知を必要最小限にする常に反応し続ける状態を減らす
家庭困った時に怒らず相談できる約束をする被害の早期発見につなげる
家庭顔写真・学校名・位置情報を出さないルールを決める個人情報を守る
学校SNS上のいじめも現実のいじめとして扱う被害を軽視しない
部活動・スポーツ撮影・投稿・拡散のルールを事前に共有する子どもの尊厳を守る
地域子どもがSNS以外で人とつながれる場をつくる孤立を防ぐ
行政・社会企業に安全設計と年齢確認の責任を求める家庭任せにしない

ここで大切なのは、子どもを監視することだけではなく、子ども自身が「危ないかもしれない」と気づける力を育てることだと思います。

危ないから取り上げる、ではなく、危ない場面を一緒に考える。失敗した時に責めるのではなく、早めに相談できる関係をつくる。その積み重ねが、子どもを守る力になるのではないでしょうか。

9. まとめ:子どもをSNSから切り離すのではなく、社会全体で守る

今回の愛媛新聞の記事を読んで、子どもとSNSの問題は、これからますます大きなテーマになると感じました。

SNSには、いじめ、犯罪、依存、心の健康への影響など、確かに深刻なリスクがあります。一方で、友人とのつながり、趣味の共有、情報収集、孤立を防ぐ居場所としての役割もあります。

だからこそ、単純に「禁止すればよい」「家庭で管理すればよい」と考えるのではなく、子どもの発達段階に応じた利用ルール、企業の責任、学校での学び、地域の見守りを組み合わせて考える必要があると思います。

子どもをSNSから完全に切り離すのではなく、子どもが危険に巻き込まれにくい環境を社会全体で整えること。

その視点が、これからの子どもたちの安全と自由を守るうえで大切になるのではないでしょうか。

参考文献・参考資料

  1. 愛媛新聞.「イチからQ 子どもとSNS」2026年7月10日 朝刊, 特集12面.
  2. e-Stat.(2026)青少年のインターネット利用環境実態調査.
  3. こども家庭庁.(2026)令和7年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」報告書.
  4. eSafety Commissioner.(2026)Social media age restrictions.
  5. 警察庁.(2025)SNSを取り巻く犯罪と警察の取組.
  6. Office of the Surgeon General.(2023)Social Media and Youth Mental Health.
  7. UNICEF.(2026)Age restrictions alone won’t keep children safe online.
  8. Shannon H, Bush K, Villeneuve PJ, Hellemans KG, Guimond S.(2022)Problematic Social Media Use in Adolescents and Young Adults: Systematic Review and Meta-analysis. JMIR Mental Health, 9(4), e33450.
ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan、JFA-B級
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。
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