デジタル教科書の正式化|子どもたちへの影響を考えてみました

谷本一真
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主な参考文献:愛媛新聞社.(2026)「デジタル教科書 効果見極め子ども第一の運用を」『愛媛新聞』2026年6月19日朝刊, 社説.

今朝の愛媛新聞の社説を読んで、デジタル教科書について改めて考えました¹。

デジタル教科書には、文字を拡大できる、音声を聞ける、動画で理解しやすくなるなどの利点があります。一方で、子どもたちの読解力、集中力、目や姿勢への影響を考えると、「便利だから全面的に進める」という考え方には慎重であるべきだと感じます。

私個人としては、子どもの学びの中心は、やはり紙の教科書や紙の本であってほしいと思っています。紙を手に取り、ページをめくり、線を引き、少し戻って読み直す。そうした学びの時間は、単なる情報取得ではなく、お前人間が行ってきた考える力を育てる大切な経験ではないかと感じるからです。

1. デジタル教科書とは?

文部科学省によると、学習者用デジタル教科書は、紙の教科書の内容を電磁的に記録した教材として制度化されました²。これまでは、紙の教科書を主たる教材としながら、必要に応じてデジタル教科書を併用する形でした²。

今回の大きな変化は、2026年6月10日に学校教育法等の改正法が成立し、デジタルの形態を含む教科書も正式な「教科書」として位置づけられる方向になったことです³。文部科学省は、今回の改正について「デジタル化自体が目的ではない」と説明し、紙とデジタルそれぞれの良さを生かすことを目的としています³。

次の表にまとめてみました。

種類特徴気になる点
紙の教科書読み直しやすい荷物が重い
デジタル教科書音声・動画が使える³集中が乱れやすい⁴
併用両方を使える使い方の設計が必要

大切なのは、「デジタルか紙か」という二者択一ではなく、どの場面で、どちらを使うのが子どもにとってよいのかを丁寧に考えることだと思います。

2. 海外では本当に廃止されたのか?

「海外ではデジタル教科書が廃止された」という話を聞くことがあります。ただし、調べてみると、すべての国で一律に廃止されたというより、「過度なデジタル化を見直している国がある」と捉える方が正確に近いようです。

たとえばスウェーデン政府は、2024年に「読書時間を増やし、スクリーン時間を減らす」方針を示しました。小学校段階の全国テストについても、デジタルではなく紙で行う方向に修正したと説明しています⁵。これは、初期の学びではペン、紙、実物の本を使う方がよいという科学的知見を重視したものとされています⁵。

また、UNESCOの2023年報告書は、教育におけるテクノロジーは、適切で、公平で、持続可能で、子どもの最善の利益にかなう場合に導入されるべきだとしています⁶。つまり、世界的にも「デジタルを使えば教育がよくなる」と単純には考えられていないようです。

3. 紙とデジタルで読解力は変わるのか?

ここはとても大切な点です。

読書媒体と読解力に関するメタ分析では、特に説明文や長い文章の理解において、紙で読む方が理解しやすい傾向が示されています⁷。別のシステマティックレビューでも、紙とスクリーンを比較した研究を整理し、紙での読解に利点がある可能性が示されています⁸。

もちろん、すべての子ども、すべての文章で紙が優れていると断定することはできません。しかし、国語、社会、理科の説明文のように、文章をじっくり読み、前後関係をつかみ、自分の頭で整理する学びでは、紙の良さは今後も大切にすべきだと感じます。

次の表に、子どもへの影響を整理してみました。

視点期待できること注意したいこと
読解紙は深く読みやすい⁷画面は流し読み
英語音声で確認できる³使いすぎに注意
理科動画で理解しやすい³観察体験が減る
健康配慮で軽減可能⁹目・姿勢の負担

デジタル教科書は、英語の発音、理科の実験手順、特別な支援が必要な子どもの文字拡大や読み上げなどでは大きな助けになる可能性があります³。反対に、長い文章をじっくり読む学習まで画面中心になると、子どもたちの深く読む力に影響するかもしれません。

4. 私たちの暮らしへの影響

学校で使う教材は、子どもの生活習慣にも影響すると思います。

学校でもタブレット、家庭でもスマートフォンやゲーム、動画視聴となれば、子どもが画面を見る時間はさらに長くなります。OECDのPISA関連資料では、学習目的での適度なデジタル利用には良い関連がある一方、授業中のデジタル機器による注意散漫や、学校での娯楽目的の利用は学力や学校への所属感と悪い関連を示すことが報告されています⁴。

文部科学省も、児童生徒がICTを活用する際には、目の疲れ、姿勢、使用時間など健康面への配慮が必要だとしています⁹。

宇和島のような地方でも、これは同じ課題だと思います。学校や家庭によって、デジタル機器への慣れ、家庭での使い方、保護者の見守りには差があります。だからこそ、地域として「紙で読む時間を守る」「デジタルは目的を決めて使う」「家では画面時間を増やしすぎない」といった共通理解が必要になるのではないでしょうか。

5. 留意しておきたいこと(断定はできません)

デジタル教科書に反対する意見だけでなく、メリットもきちんと見ておく必要があります。

たとえば、視力や読み書きに困難がある子どもにとって、文字拡大や音声読み上げは学習参加を助ける可能性があります。英語ではネイティブ音声を繰り返し聞けます。理科や社会では、動画や資料を通じて理解が深まることもあると思います³。

一方で、効果がある場面と、紙の方がよい場面を分けずに、すべてをデジタルに寄せてしまうことには注意が必要です。教育は効率だけでは測れません。集中する時間、手で書く時間、紙の本と向き合う時間も、子どもが成長するうえで大切な学びだと感じます。

6. ここから考えたこと

ここからは私の考えです。

私は、子どもの時期は「学校では紙を中心に学び、必要な場面でデジタルを使う」くらいがよいのではないかと思っています。学校外でデジタル機器に触れる機会は、今の子どもたちにはすでに多くあります。だからこそ、学校という場では、紙の本を読み、ノートに書き、先生や友達と対話しながら考える時間を守ってほしいと感じます。

大人になれば、仕事でも生活でもデジタル機器を使う場面は自然と増えます。その前に、まずは紙の本を読む力、文章を粘り強く追う力、自分の手で書いて整理する力を育てることが大切ではないでしょうか。

デジタル教科書そのものを完全に否定するのではなく、「子ども第一」で使い方を決めること。そのためには、導入ありきではなく、子どもの読解力、健康、集中力、先生の負担、家庭での生活まで含めて検証していく必要があると思います。

7. まとめ

デジタル教科書について、今回考えたことをまとめます。

  • デジタル教科書は、2026年の法改正で正式な教科書として位置づけられる方向になりました³。
  • 海外では、全面廃止というより、過度なスクリーン利用を見直す動きが見られます⁵。
  • 研究では、長い文章や説明文の読解では、紙の方が理解しやすい可能性が示されています⁷⁸。
  • 一方で、音声、動画、文字拡大など、デジタルならではの利点もあります³。
  • 大切なのは、紙を基本にしながら、子どもにとって本当に必要な場面でデジタルを使うことではないかと思います。

教育の目的は、機器を使いこなすことではなく、子どもたちが深く考え、自分の言葉で理解し、社会の中で生きていく力を育てることだと思います。

デジタル教科書の議論も、効率や便利さだけでなく、子どもたちの未来にとって何が本当に大切なのかという視点で考えていきたいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献・参考資料

  1. 愛媛新聞社.(2026)「デジタル教科書 効果見極め子ども第一の運用を」『愛媛新聞』2026年6月19日朝刊, 社説.
  2. 文部科学省.(2026)「学校教育法等の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決され成立しました. URL: https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2026/20260610.html
  3. 文部科学省.(2026)学習者用デジタル教科書について. URL: https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/1407731.htm
  4. OECD.(2024)Students, digital devices and success. URL: https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/publications/reports/2024/05/students-digital-devices-and-success_621829ff/9e4c0624-en.pdf
  5. Government Offices of Sweden.(2024)Government investing in more reading time and less screen time. URL: https://www.government.se/articles/2024/02/government-investing-in-more-reading-time-and-less-screen-time/
  6. UNESCO.(2023)Global education monitoring report 2023: technology in education: a tool on whose terms?. URL: https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000385723
  7. Delgado P, Vargas C, Ackerman R, Salmerón L.(2018)Don’t throw away your printed books: A meta-analysis on the effects of reading media on reading comprehension. Educational Research Review, 25, 23-38. URL: https://cris.technion.ac.il/en/publications/dont-throw-away-your-printed-books-a-meta-analysis-on-the-effects/
  8. Clinton V.(2019)Reading from paper compared to screens: A systematic review and meta-analysis. Journal of Research in Reading, 42(2), 288-325. URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/1467-9817.12269
  9. 文部科学省.(2025)端末利用に当たっての児童生徒の健康への配慮. URL: https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_00070.html
ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan、JFA-B級
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。
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