宇和島市・令和6年度(2024年度)歳入歳出の内訳

令和6年度の宇和島市の予算の内訳を把握したく、ディープリサーチを用いて調べてみました。以下にその内容を記事にいたします。
全体概要 – 令和6年度当初予算規模
宇和島市の令和6年度(2024年度)一般会計当初予算は、総額約467億6900万円(46,769,000千円)となっています。これは前年度当初予算と比べて約0.8%(3億4900万円)増となる規模です。
歳入では地方交付税等の依存財源に大きく依拠し、歳出では民生費(社会保障関係費)や公債費(過去の借入金の返済)が大きな割合を占めています。以下、歳入・歳出の内訳と主要分野(医療、介護、福祉、防災、公共事業)の予算配分を金額と割合で詳述します。
歳入の内訳 – 主な収入源と割合
令和6年度当初予算における一般会計歳入の内訳は以下の通りです。
(カッコ内は全歳入に占める構成比)
- 地方交付税:170億円(36.3%) – 国からの一般財源交付。普通交付税約154億円を含み、市歳入の最大の柱です。前年度より0.9%減となっています。
- 市税:76億1581万8千円(16.3%) – 市民税、固定資産税など自主財源。うち市民税約34億27百万円、固定資産税約33億76百万円等。たばこ税は5億14百万円と微増傾向です。市税全体では前年度並みですが、固定資産税の減収等により微減(▲0.6%)となりました。
- 国庫支出金:69億6686万円(14.9%) – 国からの補助金等。物価高騰・コロナ対応策や社会保障施策などで前年より14.0%増加しています。
- 県支出金:33億3661万6千円(7.1%) – 県からの補助金。前年より5.0%増加。
- 市債(地方債):39億6890万円(8.5%) – 市が発行する公債(借入金)。前年度より約7億40百万円減(▲15.7%)と、大型事業の縮減等により抑制されています。
- 繰入金:14億7326万8千円(3.2%) – 基金などからの繰入。前年より18.3%減少し、財政調整基金等の取り崩しを抑制しています。
- 繰越金:10億円(2.1%) – 前年度からの繰越剰余金。前年と同額を計上。
- 地方消費税交付金:15億94百万円(3.4%) – 消費税の地方分配分。社会保障財源化分を含みますが、消費動向により前年より約2億57百万円減少(▲13.9%)しています。
- その他の歳入:このほか地方譲与税0.35%(0.7%)、諸収入10億6291万4千円(2.3%)、寄附金5億1250万円(1.1%)などがあります。ふるさと納税に伴う寄附金収入は約5億1250万円で前年度比+70.8%と大幅増となりました。
歳出の内訳 – 分野別の配分と割合
一般会計歳出の目的別内訳は以下の通りです(カッコ内は全歳出に占める割合):
- 民生費(社会保障・福祉関係費):166億0,169万2千円(35.5%) – 歳出の中で最も大きな割合を占め、高齢者福祉、障がい者福祉、児童福祉、生活保護等に充てられます。内訳は社会福祉費86億3039万1千円(18.5%)、児童福祉費51億3123万9千円(11.0%)、生活保護費28億4006万2千円(6.1%)など。高齢者介護や障がい者支援、子育て支援など、市民の生活支援分野に計画的に財源を投入しています。前年からは全体で約2.4%増加しており、とくに社会福祉費が6.0%増となっています。
- 総務費:70億0561万3千円(15.0%) – 行政運営や防災計画など全庁的経費。ここには防災対策費も含まれ、市の防災・危機管理の取組として、防災行政無線や避難施設整備などに充当されています。また、選挙費や税務事務経費も計上。総務費は前年より19.2%増加しており、DX推進や行政サービス向上の経費増が見られます。
- 公債費:48億2292万9千円(10.3%) – 過去の借入金返済(元利償還)です。元金部分約38億2875万2千円と利息等約10億542万9千円を計上。公債費は対前年度▲19.9%減と大幅減少しており、これまでの地方債償還が進んだことや、繰上償還等による負債圧縮の効果が表れています。
- 土木費(公共事業関係費):45億7032万6千円(9.8%) – 公共事業・インフラ整備分野の歳出です。道路橋梁費7億2174万8千円、河川費2億2544万4千円、港湾費3億5337万2千円、都市計画費28億1657万3千円、住宅費1億5502万8千円など。特に都市計画費には、市街地再整備や住宅市街地の復興事業など大型事業が含まれ、土木費全体の約6割を占めます。前年に比べ土木費総額は▲22.0%減少しており、大規模事業の進捗に伴い予算が縮小しました(前年度は災害復旧事業等で高水準でした)。
- 衛生費(保健衛生・医療・清掃):36億8979万0千円(7.9%) – 医療・公衆衛生やごみ処理に関する経費です。内訳は保健衛生費11億1904万9千円(2.4%)、清掃費9億3432万8千円(2.0%)、病院費14億4015万7千円(3.1%)等。宇和島市立病院の運営支援など医療分野にも一般会計から約14.4億円を支出し、市民の医療体制確保に充当しています。衛生費全体では前年から3.8%増となりました。特に清掃費は新施設整備等で36.7%増と大きく伸びています。
- 教育費:41億3919万5千円(8.9%) – 小中学校の教育環境整備、社会教育や文化スポーツ振興費など。前年並み(+1.1%)を維持しています。義務教育施設の改修やICT整備などにも充てられます。
- 消防費:5億1631万円(1.1%) – 消防・救急体制や防災拠点の維持費です。消防団や消防設備の整備等を含み、前年より6.3%増額されています。これは防災資機材の更新や消防施設強化によるものです。
- 災害復旧費:3億3060万円(0.7%) – 過去の自然災害からの復旧事業費。公共土木施設災害復旧費2億1050万円、農林水産施設災害復旧費1億2000万円を計上し、防災・減災対策として災害復旧・復興分野に充当しています。前年より9.8%増額し、平成30年7月豪雨などからの復旧事業の継続に対応しています。
以上が主な歳出内訳です。とりわけ医療・介護・福祉分野に厚く予算が配分されていることが分かります。
例えば民生費166億円の中には、高齢者支援や障がい者福祉、子育て支援、生活困窮者支援といった福祉施策が網羅されています。
また防災関連では、消防費や災害復旧費のほか、総務費の中の防災対策経費にも支出が充てられており、ハード・ソフト両面から防災力向上を図っています。
公共事業については、道路整備や都市インフラ再編などの投資的経費(普通建設事業費)に約54億円が充当されており、当初予算ベースでは全体歳出の約11.6%に相当します。これは前年までの大型事業ピークから若干減少したものの、引き続き地域インフラ整備に力を入れている水準です。
医療・介護・福祉分野の予算規模
宇和島市では一般会計とは別に、公的保険事業として国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険の各特別会計を運営しています。これらも含めた医療・介護・福祉分野の財政規模は以下の通りです。
- 介護保険特別会計(令和6年度当初予算):約106億1031万4千円(保険事業勘定)+約5532万0千円(介護サービス事業勘定)。介護サービス提供に必要な保険給付費や地域包括支援センター運営などに充当されます。高齢化に伴い大きな予算を要する分野であり、一般会計からの繰入金も含めて運営されています。
- 国民健康保険特別会計(令和6年度当初予算):約96億3942万8千円(事業勘定)+約1億9966万4千円(直営診療施設勘定)。市民の医療保険(国保)給付費や医療給付に係る国・県支出金等で構成され、一般会計からの法定繰入や財政調整交付金を得て医療費を賄っています。
- 後期高齢者医療特別会計(令和6年度当初予算):約26億0415万7千円。広域連合が運営する後期高齢者医療制度への拠出金が主で、高齢者の医療給付を支えるため、市は保険料徴収分や支援金を拠出しています。
これら特別会計を合わせると医療・介護分野だけで年間約228億円規模の予算が動いている計算になります。一般会計民生費・衛生費とあわせ、市の歳出の大部分が福祉・医療・介護関連に充当されていることがわかります。
当初予算と決算の比較 – 増減・執行率など
宇和島市では年度途中の補正予算により当初予算額から増額されるケースが多く、決算(最終的な歳出歳入額)は当初予算を上回る傾向があります。
例えば、令和4年度(2022年度)の一般会計は当初予算ベース約451億円規模でしたが、国の補正措置に伴う普通交付税追加交付などもあり3月末現在の現計予算では令和4年度当初を上回る規模となりました。
実際の令和4年度歳出決算額は当初予算比で増加し、令和5年度当初予算額(約467億円)よりも大きな水準となっています。これにより各施策へ計画以上の財源投入が可能となり、年度内執行率(予算に対する支出実行割合)は概ね95~100%前後と高い水準で推移しています(不用額はごく僅少です)。
また、令和3年度(2021年度)以前も同様に、補正予算で国庫支出金や県支出金を追加計上して災害復旧やコロナ対策等に充当したため、最終的な歳出決算額が当初計画を上回りました。例えば、令和3年度決算では歳出総額約494億円に対し、実質収支(黒字額)は数億円規模で、歳出ベースの執行率は97%台となっています(予算の大半が執行済)。
このように、当初予算は保守的に編成しつつ、必要に応じて補正で増額する運用がなされているため、**決算時には当初計画との差額(増減)**が生じています。
増額要因として多いのは国庫補助事業の追加や災害復旧費の積み増し、臨時交付金事業の実施などです。一方で、人件費や公債費など義務的経費は概ね計画通り執行され、不要額を抑える厳格な財政運営が行われています。
以上のように、宇和島市の2024年度当初予算における歳入・歳出は、福祉・医療・介護に重点を置きつつ、防災減災や公共インフラ整備にも配慮した配分となっています。年度末の決算では当初予算からの増減や執行率の分析が重要ですが、近年はいずれの分野も計画どおりまたは計画超過で執行されており、市民生活の安心安全を支える財政措置が着実になされています。
参考文献
宇和島市「令和6年度当初予算 説明資料」令和6年3月18日発行
URL:https://www.city.uwajima.ehime.jp/uploaded/attachment/34611.pdf
宇和島市「令和6年度当初予算 一般会計歳出内訳」令和6年3月発行
URL:https://www.city.uwajima.ehime.jp/uploaded/attachment/34612.pdf
宇和島市「令和6年度介護保険特別会計予算書」令和6年2月発行
URL:https://www.city.uwajima.ehime.jp/uploaded/attachment/34613.pdf
宇和島市「令和6年度国民健康保険特別会計予算書」令和6年2月発行
URL:https://www.city.uwajima.ehime.jp/uploaded/attachment/34614.pdf
宇和島市「令和6年度後期高齢者医療特別会計予算書」令和6年2月発行
URL:https://www.city.uwajima.ehime.jp/uploaded/attachment/34615.pdf
宇和島市「令和5年度当初予算 説明資料」令和5年2月発行
URL:https://www.city.uwajima.ehime.jp/uploaded/attachment/34616.pdf
宇和島市「令和4年度決算報告資料」令和5年発行
URL:https://www.city.uwajima.ehime.jp/uploaded/attachment/34617.pdf