地方分権の転機となった「三位一体改革」とは?

谷本一真
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三位一体改革とは、小泉内閣時代の2003年頃から2006年頃にかけて日本政府が推進した財政改革であり、地方分権を促進するために実施されました。この改革は「国庫補助負担金の削減」、「地方交付税の見直し」、「税源移譲」の三つの要素が一体的に行われたため、「三位一体改革」と呼ばれているようです。

1.国庫補助負担金の削減

国から地方への補助金を大幅に削減し、地方自治体が自主的に政策決定できるようにしました。しかし、補助金削減分を地方自治体が自らの税収や地方債、さらには各種手数料や料金の引き上げなどで補う必要が生じたため、地方にとっては財政的負担が増す結果となったとされているようです。

宇和島市の問題点や取り組みとしては、市町村合併に伴う固定資産税の統一問題や第一次産業の低迷があり、財政力が弱体化しました。その対応として、固定資産税の税率統一の議論や、予算・職員の削減といった行財政改革を進めることで財政的負担を補ったとされています。

固定資産税の統一問題とは、宇和島市が周辺の町村と合併した際、それぞれの地域ごとに固定資産税の税率が違っていたため、税金の差をなくして一つの税率にまとめる必要があった問題のことです。税率を統一すると、税金が上がる地域も下がる地域も出てくるため、市民にとって公平な税金の仕組みを作ることが課題となりました。

2.地方交付税の見直し

地方自治体間の財政力格差を調整する地方交付税制度を改革し、財政の効率化を目指しましたが、自治体間の格差が拡大する問題も指摘されているようです。

宇和島市における地方交付税の総額は令和5年度(2023年度)で17億1,500万円です。このうち、普通交付税が15億6,500万円、特別交付税が1億5,000万円となっています。

地方交付税は、使途が特定されていない一般財源として市の様々な支出に充てられます。主な支出項目としては、高齢者福祉や障害者支援、児童福祉、生活保護などの民生費、市役所の運営費などの総務費、道路整備などの土木費、ごみ処理などの衛生費、農業・林業・水産業振興の農林水産業費、商業振興の商工費、学校教育などの教育費があります。

3.税源移譲

地方自治体の財政自主性を高めるため、国税から地方税へ税収の移転が行われました。具体的には所得税の一部が住民税に移譲されましたが、都市部と地方で税収に大きな差が生じたとも言われているようです。

宇和島市における所得税と住民税の総額について、具体的な数値は公表されていませんが、住民税の税率は均等割(市民税1,500円、県民税3,500円の合計5,000円)と所得割(課税所得金額に対して市民税6%、県民税4%の合計10%)から構成されています。所得税は国税で、所得金額に応じて5%~45%の範囲で課税されています。

なお、住民税の均等割や所得割の税率は市や県によって異なります。例えば、東京都の場合、均等割は市民税3,500円、都民税1,500円の合計5,000円、所得割は市民税6%、都民税4%の合計10%と宇和島市と同率ですが、自治体によっては異なる税率を採用している場合もあります。例えば、岡山市では均等割が市民税3,500円、県民税2,000円の合計5,500円となっており、所得割は宇和島市と同じ10%です。また、千曲市の場合、均等割が市民税3,000円、県民税2,000円の合計5,000円で、所得割は同じく10%となっています。詳しくは各自治体のホームページ等で確認することができます。

さいごに

この改革により地方自治体の自己決定権が増し、地方の特色を生かした政策が可能になった一方で、財政力が弱い自治体にとっては財政運営が厳しくなったとの評価もあるようです。

この改革は現在においても、地方自治体の自主性や地域特性を生かした政策立案を促進する効果をもたらしています。一方で、税源移譲や補助金削減によって都市部と地方の財政格差が広がり、財政力が弱い自治体ほど財政運営が厳しくなるという課題も残っています。また、自治体間の競争や効率化が進んだ反面、地域間のサービスや住民負担の格差が課題として指摘されています。

地方分権を促す画期的な取り組みであったものの、その影響については評価が分かれているのが実情とされているようです。

【参考・引用文献】
①神野直彦『地方財政改革の経済学:三位一体改革の検証と展望』(東洋経済新報社、2006年)
②総務省「三位一体改革について」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouhu.html

ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートしてさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、一人ひとりの健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。個々のニーズや目的に応じたプログラム設計を行いますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。お問い合わせはSNSや問い合わせフォームからお願いいたします。
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