ムーンショット目標と大阪・関西万博:技術革新が変える未来

大阪・関西万博がもたらす社会変革
大阪・関西万博では、「老い」「格差」「疾病」などの社会課題を最先端技術で解決し、より良い未来を目指すことがテーマの一つとなっています。これは、日本政府が掲げる「ムーンショット型研究開発制度」の目標とも深く関わっていると思います。ムーンショットとは、アメリカのアポロ計画のように、実現が困難でも挑戦するべき大胆な目標を指します。
現在、日本では7つのムーンショット目標が設定されており、大阪・関西万博の技術展示や実証実験は、これらの目標達成を後押しするものとなっています。
① アバター技術で「老い」や「格差」を解消(ムーンショット目標1・6)
▶ ムーンショット目標1:2050年までに、人が身体・脳・空間・時間の制約から解放された社会を実現
▶ ムーンショット目標6:2050年までに、超早期予測と介入で、主要疾患の克服を目指す
大阪大学の石黒浩教授が提案する「アバター共生社会」は、ムーンショット目標1の実現に直結します。これは、人がアバターを遠隔操作し、物理的な制約を超えて社会参加できる未来を目指すものです。
具体例
- アバター警備員:ブラジルの75歳男性が日本の夜間警備の仕事を遠隔で行う
- 医療遠隔支援:専門医が地方の病院での手術を遠隔でサポート
- 教育・労働環境の変革:障害を持つ人や高齢者も、アバターを通じて社会に貢献できる
さらに、NTTの次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」は、遅延を200分の1に抑えた高速通信を実現し、リアルタイム遠隔操作を可能にします。これは、医療格差の解消や、都市と地方の労働機会の平等化に貢献し、ムーンショット目標6にもつながります。
② 心筋シートで「死なない未来」(ムーンショット目標2)
▶ ムーンショット目標2:2050年までに、AIとロボットの協働により、100歳まで健康で活躍できる社会を実現
大阪大学の澤芳樹特任教授は、iPS細胞から育てた「心筋シート」を活用し、心臓病を克服することを目指しています。心筋梗塞や心不全の患者に対し、人工的に作られた心筋シートを移植し、機能を回復させる技術です。
具体例
- 心臓病で死なない社会:心筋シート技術により、将来的には心臓移植を不要にする
- 個別化医療の発展:患者の細胞から心筋を作り出し、拒絶反応のない治療を実現
これは、ムーンショット目標2の「100歳まで健康で活躍できる社会」の実現に向けた大きな一歩となります。
まとめ:万博 × ムーンショット目標
大阪・関西万博は、日本のムーンショット目標を社会実装する実験場のような位置づけになっていると思われます。
ムーンショット目標 | 万博の実証プロジェクト |
---|---|
目標1:物理的制約からの解放 | アバター技術による遠隔就労、医療支援 |
目標2:100歳まで健康な社会 | iPS細胞を活用した心臓病治療 |
目標3:持続可能な社会 | AI・ロボットによる農業・製造の自動化 |
目標4:環境と経済の両立 | 低消費電力の次世代通信技術「IOWN」 |
目標6:疾患の克服 | 遠隔医療技術、心筋シート移植 |
目標7:人とAIの共進化 | AIアシスタント、教育AI、自律ロボット |
万博を契機に、未来の社会の姿が少しずつ形になっていきます。ムーンショット目標で描かれた未来が、技術革新とともに現実化していくのが、大阪・関西万博の大きな意義の一つといえるでしょう。
参考文献
- 大阪・関西万博公式サイト – https://www.expo2025.or.jp
- 内閣府 ムーンショット型研究開発制度 – https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot
- 大阪大学 石黒浩研究室 – http://www.islab.i.kyoto-u.ac.jp
- NTT IOWN構想 – https://www.rd.ntt/iown
- 大阪大学 澤芳樹教授の研究 – https://www.osaka-u.ac.jp