デュルケームの社会分業論と個人化

谷本一真
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本記事では、社会学者エミール・デュルケームの『社会分業論』を解説し、社会の発展とともに人と人の関係がどのように変化してきたのかを考察します。

昔の社会と「機械的連属」

伝統社会は、血縁共同体や地域集団を基盤とする形態でした。このような社会においては、人々は同じ価値観や行動構造を共有していました。

デュルケームはこの結びつきを「機械的連属」と呼びます。この社会の特徴は次のとおりです。

  • 同調性が高く、人々は比較的同じ仕事をしている
  • 社会全体が共通の信念や規範を持ち、個人の自立性が低い
  • ルール避役や社会的制裁が強い

この機械的連属によって社会は結束力を持ちましたが、個人の自由度は低く、移動性も限られていました。

近代社会の「有機的連属」と個人化

産業化や都市化により社会は大きく変化しました。これにより、機械的連属から「有機的連属」への移行が生じます。

  • 個人が違う職種や専門性を持ち、社会は多様性を高める
  • 同調性よりも相互依存性が社会の結びつきを作り出す
  • 社会の一員としての任務に基づく信頼関係が主になる

この世界では、人々は「個人化」を深め、自己実現を追求するようになりました。ただし、これは新たな問題も与えます。

  • アノミーの問題: 社会の規範が薄れることで個人が孤立しやすくなる。デュルケームによれば、アノミーとは、社会の急激な変化により規範が失われ、人々が「どのように行動すべきか」が分からなくなる状態を指します。これにより、個人は社会とのつながりを失い、精神的な不安や孤独を感じやすくなります。特に、経済の変動や社会的不平等の拡大がアノミーを助長すると考えられています。
  • 道徳の再構築の必要性: 機械的連属の社会では伝統的な信念が社会の結びつきを支えていたが、有機的連属の社会では新たな倫理観が必要

おわりに

デュルケームの社会分業論は、社会の変化による個人と社会の関係を理解する上で大きな手がかりになります。自分のいまいる社会の構造を見直し、いかにして他者との結びつきを作り出すか考える参考になるのではないでしょうか。

ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan
PRI(Postural Restoration Institute)コンセプトを基に、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたコンディショニング指導を行っています。また、小学生を中心にサッカー指導者としても活動し、子どもたちの心身の成長をサポートしてさせていただいています。 運動や生活習慣の改善を通じて、一人ひとりの健康づくりのサポートに情熱を注いでいます。個々のニーズや目的に応じたプログラム設計を行いますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。お問い合わせはSNSや問い合わせフォームからお願いいたします。
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