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高血圧と死亡リスク、85歳以上ではどうなる?

谷本一真
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日本人高齢者を対象とした大規模コホート研究により、高血圧が死亡リスクに与える影響について新たな知見が得られました。この研究は、岡山大学就実大学の赤木晋介氏らによって行われ、Geriatrics Gerontology International誌の2024年12月12日号に掲載されています。

研究概要と目的

この研究では、岡山市に住む65歳以上の54,760人を対象に、高血圧が全死亡および心血管疾患による死亡リスクにどのような影響を与えるかを調査しました。
特に年齢層ごとの違いに焦点を当て、65–74歳、75–84歳、85歳以上の3つのグループに分けて解析しました。

血圧値に基づき6つのカテゴリー(C1〜C6)に分類し、C3(収縮期血圧130〜140mmHg、拡張期血圧85〜90mmHg)を基準に、各カテゴリーの死亡リスクを統計モデルで評価しました。

主な研究結果

  1. 全死亡リスク
    高血圧カテゴリー(C5、C6)では以下の通りリスクが増加しました:
    (HR:ハザード比。ある要因が死亡リスクにどの程度影響を与えるかを示す指標で、1を基準値とします。1より大きければリスク増加、1未満であればリスク減少を意味します。)
    • C5(収縮期160〜180mmHg):HR 1.11(95% CI: 1.04〜1.19)
    • C6(収縮期180mmHg以上):HR 1.23(95% CI: 1.09〜1.38)
  2. 心血管疾患死亡リスク
    高血圧が心血管死亡リスクにも関連しており、C6ではHRが1.36(95% CI: 1.09〜1.70)に達しました。
  3. 年齢層別の結果
    年齢による違いが顕著でした:
    • 65〜74歳:高血圧(C5、C6)の全死亡リスクは1.26〜1.75と大幅に上昇。
    • 75〜84歳:ややリスク増加(HR 1.16〜1.19)。
    • 85歳以上:リスク増加は見られず、むしろ**低血圧(C1)のリスクが1.28(95% CI: 1.16〜1.41)**と高くなりました。

研究の示唆

この研究は、85歳以上の高齢者において高血圧が死亡リスクに必ずしも影響を与えないことを示しています。一方で、低血圧がかえって死亡リスクを増加させる可能性が示唆されています。

高齢者の血圧管理においては、年齢や体の状態を考慮し、単に血圧を下げるだけではなく、全体的な健康状態や生活の質を重視する必要があることを浮き彫りにしています。

今後の展望

高齢者における血圧管理のあり方を再考するための重要なデータとなる本研究は、医療従事者や介護者にとって大きな示唆を与えるものでしょう。特に85歳以上の高齢者における低血圧のリスク管理は、より注目されるべき課題と言えます。

原著論文
Akagi S, et al. Geriatr Gerontol Int. 2024 Dec 12. [Epub ahead of print]

対象

  • 研究元:岡山大学・就実大学
  • 対象:岡山市在住の65歳以上の高齢者54,760人
  • 期間:2006年4月〜2008年3月
ABOUT ME
谷本一真
谷本一真
理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、PRP-Japan
PRIコンセプトを基に、障害の予防とパフォーマンスの向上を目的としたコンディショニングをおこなっています。また、サッカー指導者としても活動しており、特に小学生に対する指導を行っています。 運動や習慣改善によって健康を支援することに情熱を注いでおり、各個人のニーズに合わせたプログラムを設計しています。興味がある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。詳細は直接やりとりの中でお伝えいたします。
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