四国理学療法士学会を経て
R5.11/25に、第51回四国理学療法士学会にて口頭発表をおこなってきました。
タイトルは「右内側半月板損傷後の慢性痛に対してPosturaru Restoration Instituteエクササイズにより疼痛が消失した症例」
PRIに触れたことのない理学療法士の方々へ、どのようにPRIのコンセプトを伝えられるか苦慮しながら資料をまとめていきました。
一緒に活動してくれている仲間にも、相談をしながらある程度の形になって発表へ臨みました。
しかし、PRIのコンセプトを伝えられた手応えは得られませんでした。(発表時には、2名の方に質問をいただけましたが)
そこで、今後はどのような症例発表や学会発表に繋げたら良いか綴ります。
バイオメカニクスの視点を前面に
PRIエクササイズにおいて、運動力学の視点は非常に大切だと考えています。
人間の推進力はどこから生じているのか?それには運動力学の視点が重要と感じています。
運動学と運動力学の違い
運動学と運動力学は、物体の動きを研究する物理学の分野ですが、焦点が異なります。
- 運動学(Kinematics): 物体の動きの記述に関する学問で、速度や加速度、変位などの物体の動きを時間に対して記述しますが、その動きの原因(力)には焦点を当てません。
- 運動力学(Dynamics): 物体の動きを引き起こす力に焦点を当てる学問で、力学の法則(ニュートンの運動の法則など)を用いて、力と物体の動きの関係を解析します。
簡単に言うと、運動学は「どのように動くか」を、運動力学は「なぜそのように動くか」を研究します。
バイオメカニクスは、生物体の動きと力学的原理を統合した科学分野です。
この分野では、人間の体や他の生物体の構造と機能がどのように力学的原理に従って動くかを研究します。
運動学は物体の動きの記述に焦点を当て、運動力学はその動きを生む力に注目しますが、バイオメカニクスはこれらの原理を生物学的な文脈で応用し、特に人間の運動や運動障害の理解、治療、改善に役立てます。
このため、医学、物理療法、スポーツ科学など様々な分野で重要な役割を果たします。
今回の症例発表は、7分という時間の中で、
・なぜ右側の内側半月板を損傷したのか?
・運動連鎖による膝関節へ生じるストレス
・PRIの基本コンセプト(AIC、BC)
・PRI評価
・PRIアルゴリズム
・PRIエクササイズの実例
を伝えることにチャレンジしましたが、情報量が多く症例発表ではPRIコンセプトの素晴らしさを伝えることに難渋すると痛感しました。
そこで、理学療法士は運動学の専門でもあるため、今後の症例発表などではバイオメカニクスに焦点を当てた発表にするべきだと感じました。
その方が良いと、尊敬する理学療法士の先輩からアドバイスもいただきました。(偶然、学会で遭遇しました)
例えば、右大殿筋のバイオメカニクスの一例として、大腿骨外旋や股関節伸展、重心を右から左へシフトする役割などを担います。
人間は推進力を生むためには、さまざまな筋群は協調しなくてはなりません。
私がPRIに興味を抱いた部分が、このバイオメカニクス(特に運動力学)にあります。
重心の移動
現在、職場での指導においては「重心の移動」にフォーカスして指導をしています。
今回の発表を期に、重心移動の視点が一般の方々へ運動学の重要性を伝えるために大切な視点の一つであると考えるようになりました。
推進力にも繋がる視点だと思います。
動作が滑らか=重心移動が滑らか
であることに、間違いはないかなと思います。
PRIエクササイズには、静止したように見えるエクササイズ(実際は呼吸をしているため)や、実際に動きながらおこなうエクササイズが存在します。
さまざまなエクササイズをこなせるようになることで、動作に多様性が生まれ、安定性へと繋がると考えます。
さいごに
PRIの素晴らしさは、エクササイズを通してリポジショニング(パターン(癖)の修正)やリトレーニング(新しいパターンの習得)、リストレーション(動作効率の向上)にあると私は考えています。
そのためには、人間の体が左右のどちらかに偏る理由や、なぜそれが生じているか(原因)を評価することで、エクササイズの価値が高まります。(エクササイズ時のキューイングにも影響が生じる)
日常生活動作や競技特性に繋げるためのキューイングは、実際にエクササイズ中に転移させるためには重要なエッセンスだと思います。
今回の発表では、PRIのコンセプトを強く謳い過ぎた部分がありました。
PRIのエクササイズは、処方する理由が明確に存在します。
その理由を強くするのではく、まずはエクササイズによるバイオメカニクスを前面に打ち出し、なぜそのバイオメカニクスを引き出す必要があるのかを訴えることが、学会発表では重要であったと痛感しました。
PRIを知らない理学療法士の方々や、一般の方々へ、少しでも有益な情報や経験を伝えられるように、これからも学び続けます。